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一般社団法人日本能率協会
2017/03/23

世界トップクラスのホスピタリティの課題とは? 三展合同HCJ2017 <ホスピタリティ編>

2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ホテル業界が熱い。 個人的な感覚を言うと、ほんの数年前まで、繁華街にはビジネスホテルがあるくらいで、ひとり旅用の宿はあまり見かけることはなかった。ところがこのところ、小規模でおしゃれなゲストハウスが劇的に増えた。味気ないホテルもコンセプトを強く打ち出したデザインにリノベーションされるなど、活性化が進んでいる。観光地はどこも外国人で満ちあふれていて、富士山、温泉、日本的建造物がすべて揃う「ザ・ニッポン」が楽しめる箱根あたりも外国人ですし詰めだ。これからはインバウンドを意識せずには、ホテル業界は成り立たない。

そんな中、新規にHCJ2017(※)に出展したジャンルの違う外資系の企業3社になぜ日本市場に魅力を感じているのか、参入の意図などを伺った。

製造の目的と機能が異なるからこそ日本市場に参入しても勝機がある

まず話を伺ったのは、バス・トイレ、キッチンといった水回り製品をデザインする海外トップメーカーだ。ブースには生活感を感じさせない特別感を感じさせるデザインのアイテムが並んでいる。

男性のインタビュー蛇口

「非日常を生み出す我々の製品群は、ホテル・レストラン層をもっとも得意としています。世界規模のハイエンドのホテルで、入っていないところはないと言えるでしょう」と正規輸入代理店の担当者は言う。

なるほど、そう言われると、彼らのデザイン性、ラグジュアリー性というものに一気に裏付けされたブランド力を感じてしまう。それをメーカー側の担当者があうんの呼吸でたたみかけてくる。

「日本ではお目にかかる機会も少ないと思いますが、名前を覚えて海外に出ていただくと、目にする機会は多いと思います」

確かに、海外ではないがオフィスの洗面台が日本ではあまり見かけないデザインだなと思って調べてみると、この出展者の製品だったことに気がついて驚いた。普段あまり身近な水周りのものがどこ製ということは気にしないが、一旦、気になると目についてくる。

さらに製品に対する考え方が、日本と違う点を聞いてみると、

「アメリカはバスとキッチンを、インテリアとしてひとつのつながりだと考えています。日本はどちらかというと機能性を重視する傾向にあるので、発展の仕方がまったく異なります。アメリカには食器にこだわる文化はありません。その点では日本の方が遙かに優れているでしょう。どちらも『こだわり』はありますが、どこでそれを表現したかの違いです。同じレストランに行ったときに、セットにするか、アラカルトにするかの違いとも言えます。同じ3000円で、どんなメニューを頼めるか。日本はセット販売が得意で、我々はアラカルトが得意なんです」

なるほど、そう言われると確かにわかりやすい。

「製品開発の目的が異なるんです。システムキッチンやユニットバスは、安全性と機能性は大変素晴らしいです。その分、そぎ落とした部分があるとしたら、それは我々が得意とする部分でしょう」

洗面台

確かに、彼らのブースを見ると、ひときわデザイン性の高さが目を引く。「工業製品の上にデザインを施した」のではなく、デザインの中に機能性があると言った感じだ。まるでガウディの建築群のようだ。遠目で建物を見るのと、近くで見るのと、まったく見えるものが異なるのだ。全体像を見て「曲線が美しいな」と思い、近くに行ってドアノブやサッシを見ると、そこにも装飾が施されており、いかに細部にまでこだわったのかがわかる。ムダ(に思える)な切れ目や凹凸がない。生産する上での「仕方がない」や「気付かなかった」を徹底的に排除しているのだろう。こうした配慮が「非日常」を生み出すのだ。

これまでも、個人的には、日本は水回りへの意識が少し低いと思っていたが、ホスピタリティの面でここを無視しては通れないはずだ。特に女性は、キッチンにしろ、バス・トイレにしろ、水回りの清潔感とデザイン性にこだわりがある人が多いだろう。今後はホテルやレストランだけではなく、一般家庭にもこういった製品が普及してくるに違いない。

90年前から変わらない普遍的なデザインと、明かりに対する考え方の違いがあるからこその参入

 

照明器具照明器具

 

インテリアと言えば、ライティングも欠かせない項目のひとつだ。デンマークに本社を持つこの出展者も、今回HCJ2017初出展だ。

「日本では家庭用のイメージが強いのですが、デンマークでは、レストランやホテルでもかなり採用されています。日本でも同じようにクライアントさまを増やしていきたいと考え、出展しました。俵屋、星のやといった高級な施設でご利用いただいていますが、おもとめやすい価格商品もご提供を始めたので、レストランやご家庭でも使いやすいと思います。出展してみてわかったことですが、意外と弊社の名前をご存じない方が多いようです。まだまだ広めていける部分があることを認識できました」

こちらの製品のすごいところは、90年前のデザインがそのまま今も使われているということだ。

「白熱電球にしろLEDにしろ、そのままではまぶしすぎて、相手の顔が綺麗に見えません。いかにまぶしさを取り除いて、効率よく光を必要な方向にコントロールするか、計算し尽くされています。多くの製品は、光源そのものがどこから 覗いても見えない仕様になっているんですよ」

照明器具を解説する男性アーティチョーク

ためしに72枚ものシェードを使っている商品をいろんな角度から覗いてみたが、不思議なことに、どこから見ても光源そのものは見えなかった。ただなんとなく羽をつけているデザインではないのだ。「光の美しさはグラデーションにある」と担当者は明言した。確かにどの製品も光のグラデーションが美しい。形そのものも対数らせん(オウムガイや渦巻き銀河など、自然界によく見られる螺旋)を使用するなど、なにもかもが計算づくなのだ。

日本では、照明をフラットに使用することが多いという。だが光のたまりやムラがあった方が、顔の表情がしっかり出て綺麗に見えるのだそうだ。お互いの表情が豊かに、美しく見える照明。明かり取りだけではなく、意外と侮れないライティング。ホテルなどの非日常空間ならなおさら、こだわりたい点だ。

インテリア,照明

最新のテクノロジーと、デザイン性での知名度

意外な初出展者といえば、大きな吸引力を誇る掃除機や斬新なデザインの扇風機で一躍知名度を上げたメーカー、といえばお分かりになるだろう。2016年には扇風機の小型版のようなドライヤーを発表。これらをホテルに設置するということだろうか。

ドライヤー中身シーシス

「このドライヤーは、風力がたいへん強く、早く乾くので髪が傷まないという特徴があります。熱をかけないためセットをしやすく仕上がりがよいなどのお声もいただいているので、4つ、5つ星といったハイエンドのホテルにご利用いただきたいと思っています」

また今回は、設立されたばかりのライティング部門の宣伝も兼ねているとのこと。LED照明のシリーズはヒートパイプテクノロジーという冷却システムを採用。パイプの中に水が1滴だけ入っており、これが水蒸気になり気化することでパイプを冷却するという。熱を溜めこまない設計のため、LED寿命は最大18万時間になるとのこと。オフィスや会議室などでの利用を提案している。

ハンドドライヤーハンドドライヤー

展示商品の中で、なにより目を引いたのは、ハンドドライヤーだ。蛇口一体型のものを体験したが、手をかざした途端にものすごい風圧の空気が出てくる。ここに手をかざすと10秒ほどで乾くという。手だけではなく髪までも乾きそうな風圧に、思わず笑いがこみ上げてしまった。そしてなにより魅力的なのが、すべてのハンドドライヤーには、空気を吸い込む部分にフィルターがついており、風を起こせば起こすほど、空気が綺麗になるという。

ハンドドライヤー

「高級ホテルや旅館ですと、タオルやペーパーを置いているところも多いですよね。メンテナンスやランニングコストはかかりますが、そのほうが高級感やホスピタリティを表現できるのでしょう。しかしお客様に満足いただける製品なら、ハンドドライヤー自体に価値が生まれ、充分にタオルに代わる商品になるはずです」

大風量を誇る彼らだからこそ、フィルターを通して利用できるハンドドライヤーが開発できたのだとか。利用している施設からは、トイレの悪臭がかなり軽減されたという声もあるそうだ。ハンドドライヤーを使えば使うほど、空気も合わせて綺麗にしてくれるからだろう。これは、ぜひ各種施設で採用して欲しい製品だ。

のれん食器

こうして取材を終えてみると、私たち日本人の意識の届かないところ、知識の足りないところがまだまだあることに気付かされる。もちろん、日本の技術は世界に誇るレベルだし、ホスピタリティも世界トップクラスだろう。とはいえ、誰にでも得意不得意がある。文化の違いによりこれまで目の行き届かなかった分野にも、これからは光を当てていくべきだ。

そうすれば、日本企業であろうと外資系企業であろうと、さらなる進化を遂げていくことができる。

世界には、さまざまな文化や歴史を持つ国がある。あらゆるニーズに対応し、かつ快適に忘れられない体験を味わってもらう。そんな思い出作りをするためには、ホスピタリティというものは外せないものの一つだろう。あまり観光客が気にしないような細部にも目を配ることが、東京オリンピック・パラリンピックを迎えるホストとしての役目だろう。

今回話を伺った外資系出展者3社だけでも、それぞれ全く違ったストーリーと想い、意気込みがあった。ホスピタリティはあればいいというものではない。いかに心地よく、満足感をどこに与えていくのか。そういうことを深掘りしていくことが重要だと感じた。

HCJ会場内

 

HCJ2017』『第9回国際PB展・OEM開発展

■会期 / 2017年2月21日~24日

■会場 / 東京ビッグサイト

■来場者数 / 5万6,367人(4日間合計)

■出展者数 /828社(2,096小間)

 

※ HCJとは

ホテル・旅館・観光・各種施設の『国際ホテル・レストラン・ショー(HOTERES JAPAN)』、給食・中食・弁当の『フード・ケータリングショー(CATEREX JAPAN)』、厨房・フードサービスの『厨房設備機器展(JAPAN FOOD SERVICE EQUIPMENT SHOW)』の3展示会の英文名称の頭文字を取って『HCJ(エイチシージェイ)』と総称しています。

text:和久井 香菜子 photo:小林 靖

 

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