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一般社団法人日本能率協会
2017/03/23

的確な場所に的確なシステムを導入することがOMOTENASHIへとつながっていく 三展合同HCJ2017 <生産性向上編>

フライヤー

2月21日~24日にHCJ2017(※)が開催された。

東京ビッグサイトの東展示棟1~3ホールは主に厨房機器などフード関連、4~6ホールはインテリアやホスピタリティと第9回国際PB・OEM開発展のブースだ。

1~3ホールの各ブースでは、自慢の調理器具を使って、フード提供合戦が行われている。ピザに餃子に、チャーハン、ジェラートにワイン……。あちこちからいいにおいが漂ってくる。どのブースで試食をいただいても、とても美味しい。「名コック」なるものがいなくても、今やグルメが楽しめる時代なのだな、と実感する。

人間の進化の要は、火をコントロールすることだった。原始時代の山火事や落雷でものが発火するのを待つ時代から、自ら火を起こせるようになり、そして19世紀には、電気をコントロールできるようになった。これにより我々は、必要なときに、必要なだけの熱量を得られるようになったのだ。

火加減をコントロールすることが、無駄を省き、結果として生産性向上につながる

フィナンシェバリオクッキングセンター

そんな進化・発展を実感したのが出展者ブースで行われていた「バリオクッキングセンター セミナー」だ。講師は、国際料理コンクールで数々の賞を受賞し、「メゾン・ド・タカ芦屋」の総合プロデューサーを務めるシェフだ。セミナーでは、「サーモンのミキュイ」「子羊のロティ」をたった30分で30人分を調理し、参加者に提供していた。これに使用されたのが、茹でる、焼く、炒める、煮る、揚げる、そして圧力調理までをこなす、バリオクッキングセンターだ。

サーモンのミキュイメゾン・ド・タカ芦屋

ロティとは、蒸し焼きのこと。ミキュイは、強すぎず弱すぎない絶妙な火加減で調理したものだそうだ。そう、料理でもっとも神経を使うのが、火加減や温度管理だ。弱火にしすぎていつの間にか火が消えていたり、中火でコトコトやっているうちに鍋ごと焦がしたり。買いたてのオーブンは「焼きムラ」をチェックしてから使い始めたものだ。揚げ物ひとつとっても、美味しく揚がる温度を見極めるのは、職人技の1つだったはずだ。

ところが今や、こうした火加減や温度管理は、調理器具の仕事になった。バリオクッキングセンターは、自分で設定した温度と時間で、きっちり調理をしてくれる。使う側が調理に適した温度と時間を把握していれば、失敗することがない。

セミナー中にシェフは繰り返し「プレッシャーから解放された」と言っていた。今までは、火加減を見守り、肉の火の通り具合を確認し、時間を計って野菜を茹でていた。それが、ボタン操作だけで調理が可能になったのだ。また「うっかり放置して失敗することもなくなった」という。

夜に温度設定をして放置し、翌朝に厨房に行くと、煮込みが完成しているそうだ。調理の失敗だけではなく火事の心配もあるため、こんなことも、通常のコンロでは不可能だった。

オーブンコントロールパネル

特に火加減が難しいと言われるロティとミキュイだが、セミナー中、シェフがやっていたのは、食材を切ることと、味つけをすること。「火加減を見る」ことはしなかった。

バリオクッキングセンターは注水も洗浄もその場で可能なので、大鍋を持ち歩いたり洗ったりといった力仕事からも解放される。スタッフに火加減を教える必要がなくなるため、人件費カットにもつながったという。

最近は、有名シェフ監修で、調理は現地スタッフが行い、比較的安価に美味しいメニューがいただけるレストランやホテルがあるが、それもこれらの調理器具のおかげなのだろう。人類は火をコントロールすることで発展できるのだと感じた。

速さだけでなく、美味しく、様々な握り方ができる寿司ロボットなどAI・ロボット化が進むサービス業の現場

 

寿司マシーンおにぎりいろいろ

 

調理の自動化という意味では、寿司ロボットも目を引いた。ひたすらにぎり寿司を作ってくれるものだ。食のグローバル化が進み、世界各国で寿司が求められるようになったが、職人の数はまだまだ足りない。

そこでこの寿司ロボットの需要が伸びているそうだ。国内でも回転寿司や総菜などの調理に使われるのだとか。この寿司ロボット、各社早さを競っており、1時間に4000個以上の寿司を作ることができるという。「人間業ではない」とはこのことだ。

確認した中で、最速は1時間4600個。

聞いてみると、10年前までは3000個程度だった製造スピードは年々上がり、4000個はひとつの終着点のようだ。これ以上早くしても、寿司飯にネタを乗せるなどの他の作業が追いつかないらしい。

そこで各社、今度はより「美味しい」にぎりかたを追求しているのだとか。4000個はベースの機能であり、その上でロボットによって特徴が異なる。コンパクトさがウリのものもあれば、安価であることや、より職人らしい高品質さを売りにしているものもある。クライアントのニーズに合わせてロボットを選ぶことが可能だ。

展示会では意外な発見があるもので、ある寿司ロボットの製造・発売元は、有名なヘッドフォンメーカーである。

音楽と寿司ロボット? 一体どういうつながりがあるのか。聞いてみると、CDの台頭により業績が悪化、社内公募で新規事業を募集したところ、この寿司ロボットが提案され、採用になったのだとか。

単にAI化するだけでなく、効率化するべき部分はどこかという必要と選択

 

HCJ通路の様子TLリンカーン

発見といえば、もうひとつ。

最近は、ツアーや団体旅行よりも、個人の旅行が増えた。それと同時に、旅行会社のデスクで宿を予約するのではなく、直接ネットから予約をするようになった。楽天、じゃらん、Yahoo!など、各種予約サイトがひしめき合い、ユーザーは好きなサイトから宿を予約できる。ここで問題になるのが、宿側の情報コントロールだ。宿としては、より多くの予約サイトに空き部屋を登録したい。

そのため従来は、空室が10部屋あったとすると、Aサイトに5部屋、Bサイトに3部屋、Cサイトに2部屋といったように、サイトごとに部屋を割り振って登録をしていた。しかしそれだと、Bサイトは満室だがAサイトは空室ありになるなど、バラツキが出てしまう。

そこで登場したのが「サイトコントローラー」というシステムだ。サイトごとに異なるシステムをいったんコントローラーが請け、ひとまとめにできる。宿の管理者は、空室10部屋を登録するだけで、自動的に各サイトに10部屋の空室が表示される。Aサイトから予約が入っても、残りのすべてのサイトで空室が9室へ変更。これならダブルブッキングの心配もなく、効率的に空室をさばくことができる。

サイトコントローラーと連携しているのが、予約の管理ソフトだ。

各社さまざまなシステムを提供しており、予約の内容から顧客データ、部屋の掃除の有無までが管理できる。

どのサービスも「見やすさにこだわった」と言っているが、連泊客の予約のうち、数日を歯抜けにキャンセルさせることもできる(この仕様は、工事現場などで一定期間、複数人数で宿を借りる業者を多く受け持つ宿に便利なのだそうだ)など、得意分野が異なる。これもサービスが多い分、自分のニーズに合った機能を持つシステムを選ぶといいだろう。

 

サイン情報をデーター化ペンタブ部分

 

意外なところでは、マンガ界で有名なメーカーが出展していたことに驚いた。ペンタブレットや液晶タブレットで圧倒的なシェアを誇っているメーカーだ。恐らくイラストレーターやマンガ家のほとんどが利用者だろう。しかしなぜHCJに出展するのか……? ブースを覗いてみると、なるほど納得。宿帳のデジタル化だ。

顧客は通常、宿に到着すると、紙に名前と住所などの情報を手書きする。これをタブレットにしてしまおうというのだ。そこはタブレットの第一人者、書きやすさと反応の良さはお墨付きだ。しかも、手書きで入力したデータは、自動でテキスト化されて登録される。宿帳の手書き情報をわざわざ入力しなおさなくても、勝手にデータを蓄積してくれるのである。

顧客データをデジタル化すれば、解析が可能になる。各社予約システムのサービスには、データ解析の項目がある。これにより、より適切な値段設定や販促が可能になるだろう。顧客としてシステムを利用するだけでは、考えたことのなかったIT化の波が、ホテル・旅館業界に押し寄せている。

日本能率協会,富浦渉,HCJ運営

日本能率協会の富浦渉(本展の運営責任者)は、

「東京オリンピック開催まであと3年。4000万人の外国客を集めると言っていますが、今のままでは迎える人数も体制も整っているとは言えません。今後、日本の人口が減っていくことは間違いのないことです。生産性を上げなければ、対応しきれないでしょう」と言う。

「生産性と価値向上はイコールです。

今まで料理人は調理で手一杯でしたが、生産性が上がり、その時間で、新人の教育が可能です。それで料理全体の質が上がれば、価値が上がる。とはいえ、サービス業の難しいところは『ムダなことをするのがサービスであること』です。

お品書きを筆で書くこと、生花を活けることなどは、生産性という視点で見れば逆行していますが、価値の向上ではあるわけです。どこで生産性を高めるか、その産み出された時間でなにをするかが求められるでしょう」。

ただ単に業務を効率化すれば、"良い"ということではないのである。

的確な場所に、適切なシステムを入れなければ意味がないのだ。その選択肢を直接比較し、検討できるのが展示会の大きなメリットだろう。

ホールを歩くだけでも、業界の「今」が見えてくる。生産性向上にはどんな手法があるのか、最先端の機器はどんな機能があるのか。「ホテル・飲食」という明確なカテゴリの中で、ありとあらゆる情報が入手できる機会は、そう多くはない。ある程度の時間を拘束され、資金が必要だとしても、そこで得た知識は絶大だ。ビジネスの発展に、こうした機会を利用しない手はなさそうだ。

HCJ俯瞰皮むきマシーン

 

HCJ2017』『第9回国際PB展・OEM開発展

■会期 / 2017年2月21日~24日

■会場 / 東京ビッグサイト

■来場者数 / 5万6,367人(4日間合計)

■出展者数 /828社(2,096小間)

 

※ HCJとは

ホテル・旅館・観光・各種施設の『国際ホテル・レストラン・ショー(HOTERES JAPAN)』、給食・中食・弁当の『フード・ケータリングショー(CATEREX JAPAN)』、厨房・フードサービスの『厨房設備機器展(JAPAN FOOD SERVICE EQUIPMENT SHOW)』の3展示会の英文名称の頭文字を取って『HCJ(エイチシージェイ)』と総称しています。

text:和久井 香菜子 photo:小林 靖

 

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