ようこそ、展示会!ビジネス・産業振興のために

一般社団法人日本能率協会
2016/02/19

裏側からのぞく、日本のおもてなし最前線。三展合同HCJ2016 <ホテル・サービス編>

「DISCOVER JAPAN」と聞いて、懐かしいと思ってしまった方。おそらく、なかなかにして良いお年のはず。なぜって、これは1970年代に国鉄(!)が行ったキャンペーンスローガン。日本各地の魅力を掘り起こすことで、女性を中心に個人旅行ブームが巻き起こった。

そして、ときは流れ…、いまを体現する観光ワードといえば「おもてなし」と「爆買い」のふたつだ。こうした流行語からも、日本の観光業界が内需から外需へとシフトチェンジしていることが分かるのではないだろうか。

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もちろん、こうした業界の流れは2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックの影響も大きい。しかし、その土台となっているのは2008年に設立された観光庁により本格的に動き出したプロモーション「観光立国ニッポン」である。外国人観光客の誘致はもはや国家プロジェクトとして扱われ、観光業界の盛り上がりは過去最大のものになろうとしている。

毎年2月に開催される『HCJ(※)』は、こうした観光業界を横断する日本最大級の展示会だ。ホテル・旅館といった宿泊施設から、厨房・フードサービスなどの飲食部門、給食・中食・弁当のケータリングといった企業が集結し、日本のおもてなしの舞台裏をのぞくことができる。しかし、あまりに幅広い。そこで、本レポートではホテル・サービス分野に絞って、その模様をご紹介しよう。
<HCJ2016飲食・厨房分野のレポートはこちら>
※『HCJ』……ホテル・旅館・観光・各種施設の『国際ホテル・レストラン・ショー(HOTERES JAPAN)』、給食・中食・弁当の『フード・ケータリングショー(CATEREX JAPAN)』、厨房・フードサービスの『厨房設備機器展(JAPAN FOOD SERVICE EQUIPMENT SHOW)』、この3展示会の英文名称の頭文字を取った総称。

ホテルの価値を底上げする、日本市場に合わせた最新ベッドの数々

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ここは、東京ビッグサイト東4ホール。普段の無機質な印象がガラリとかわり、床一面をカーペットで覆われている。どの出展ブースも演出に力が入っており、なかでも国内外のベッドメーカーが集まるエリアは、まるでホテルの客室がそのまま移動してきたようなリッチな空間となっていた。

ホテル滞在時間のほとんどは睡眠時間と言われている。つまり、寝具は宿泊施設のクオリティへとダイレクトに影響する重要なアイテムだ。とはいえ、ベッドはベッド。果たしていま以上に進化する余地はあるのだろうか。そんな疑問を抱えながら、まず国内最大手メーカーのブースに話を聞いてみた。

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「いま特に増えている中国人観光客の大半は、家族旅行です。そのため、2人部屋に子ども用ベッドを入れて3人部屋として使用するケースが増えてきました」。その解決として、エキストラベッドの高さやマットレスサイズが親ベッドとほぼ同等になるよう工夫されている。さらに、収納しやすい設計にすることで、ホテルマンの負担を軽減しながら部屋単価を上げられるというわけだ。

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中国人を中心としたアジア系観光客への対応はそれだけでは留まらない。アメリカで高いシェアを誇る海外メーカーにも話を聞いてみたところ、特殊ジェルを配合したマットレスで日本市場での勝負に挑んでいるという。「アジア人は欧米人と比べて、固めの寝具が好みです。地域性やお客さまのニーズを細かく分析することで、最高の眠りをご提供できるよう努めています」

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さらに、別の海外メーカーではマットレス下に小型センサーを設置した、まったく新しい発想のベッドも発見することができた。睡眠時の寝返り・脈拍・呼吸といった状態をリアルタイムで測定し、結果をシートとして残すことができる。眠りの質や無呼吸症候群など身体の異常までもスリープ診断できる仕組みだ。

こうして最新ベッドを立てつづけに見ていると、フカフカで清潔なベッドなどもはや当然。それ以上の付加価値をどうつけるのか、各メーカー揃って工夫した結果、それが宿泊施設の「売り」へと直結するのだ。リノベーションなど大規模工事の前に、「寝具を見直す宿泊施設が増えている」という
のもうなずける。

カルチャーとテクノロジーの融合が、世界に伝わる感動品質に

もちろん、宿泊施設の価値はベッドだけが作るものではない。他の施設、サービスのクオリティも求められている。もう少し平たく言ってしまうと、扉を開けた先にどこまで「わぁ!」と心が踊るものがあるか、だ。というわけで、「わぁ!」を呼び起こすアイデアが詰まったブースをいくつか紹介しよう。

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取材班がまず目を奪われたのは、木のぬくもりを全面に出した家具が展示されたブースだ。創立90年を超えるこちらのメーカーでは、一点ごとに表情が異なる天然木を活かした製品を得意としている。これらを生み出しているのは、受け継がれてきた職人技と杉材をカーブさせる独自のプレス技術。デザインの可能性が広がったことで、洋・和問わず似合うハイセンスな家具が仕上げられる。

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さらに会場内を探索してみると、木を組み合わせたドームを発見した。なかにはさまざまな材質、形状の湯船たち。製造工程の進化により、100年は壊れないとうたう製品もある。内風呂メーカーなどが中心となり、日本のお風呂の魅力を世界に発信するプロジェクトも立ち上がっていた。お湯にどっぷり浸かるという日常も、世界から見れば特異なカルチャー。というわけで、お風呂をきっかけにさらに観光客へプロモーションするため、日本発のユネスコ無形文化遺産登録をめざし活動している。

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お風呂の魅力づくりといえば、今年初めて、会場内で『ONSEN & SAUNAセミナー』が開催された。どの回も立ち見が続出するほどの大盛況。温泉・銭湯といった施設を外国人をはじめとする観光客の誘致にどのようにつなげていくべきか、業界全体の関心の高さがうかがえる。

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私たちにとっては当たり前でも、外国人観光客から見たら「わぁ!」と思うものをもうひとつ紹介しよう。世界をリードする日本のトイレだ。紹介された最新モデルは、水流を変化させることで従来型と比較して約70%の節水が可能に。さらに、水を電気分解することで除菌水を作り、清潔さも保てる仕様となっている。「誰もが使うトイレだからこそ、なるべく手を煩わせず気持ちよい環境を整えたい。日本のトイレは、そうした私たちの思いの積み重なりです」そう語る担当者の言葉には、仕事に対する自信と誇りがキラリと光っていた。

各所で話を聞いてまわると、当たり前のことを当たり前で終わらせない、プロダクト開発の根気強さに圧倒される。その原動力は使い手に向けたホスピタリティだ。これこそが、日本が提唱する「おもてなし」の正体ではないだろうか。

ITを活用した他言語対応が、ヒューマンパワーを最小限に抑える

さて、外国人観光客の増加に伴い、「言葉」の壁をいかにクリアするかは業界全体の課題となっている。各言語に対応した人材を採用するのは、コスト面で負担が大きく現実的ではない。しかし案ずることなかれ。日本にはITという強みがあるじゃないか。ここでは観光業界を縁の下で支える、最新技術をご紹介しよう。

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出張の多いビジネスマンにとってはお馴染みの、ホテルのセルフチェックシステム。宿泊客にとって便利なのはもちろん、フロントも最小限の人数で回るようになった。話を伺ったメーカーでは、さらにホテルマンの負担を軽減させる施策に挑戦していた。

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現在、特に力を入れているのは客室内に設置を想定したサービスロボットだ。キュートな見た目だが、「明日の天気は?」「オススメのレストランは?」といった質問に応えてくれたり、室内の温度、照明コントロールなどを人に代わってやってくれる。まだ試作段階ではあるが、今後は他言語対応も視野に入れており、実際のホテルに導入される日が実に楽しみだ。

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また、各店舗において外国人対応で頭を悩ませているものといえば、免税処理があがるのではないだろうか。そういった需要に応え、電子機器メーカーでは最小限の入力でパスポート添付用紙まで簡単に作成できるレジスターの開発に成功していた。

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さらに、プロジェクターを活用した他言語接客システムも展示。タッチパネルで言語を選ぶと投影されるCGモデルもチェンジする芸の細かさにこだわりを感じる。音声に合わせCGの口も動き、SFアニメのごとき世界がもうそこまで来ているのだ。

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システムの新しい活用提案として、大手印刷会社の出展が実に見応えがあった。たとえば、日本語で表記されたパッケージ。記載されたQRコードを読み取ると、他言語翻訳版がブラウザ上で確認できる。スマホのスワイプで拡大・縮小・回転も自由自在。薬のパッケージなど、正確な情報を求められる製品を中心に展開を狙っているという。

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外国人対応に限定されたわけではないが、さすが印刷会社!と驚かされた技術も紹介しよう。一見、プリクラ機のようなだが、写真を撮影すると、なんとものの20秒で商品パッケージの表面にプリントが完成。「現在は企業のプロモーションで活用されることが多いですが、観光地のお土産用としても売り込みたいと考えています。特に外国人観光客にもウケると思うんですよね」と担当者。

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同じブースから、もうひとつ面白い事例を。皆さんは子供の頃、角度を変えると絵柄が変わるカードを手にしたことはないだろうか。仕組みは実に簡単で、表面の細かい溝に合わせ、2種類の絵柄が印刷されているだけ。これを片面に日本語、もう片面には外国語の絵柄を印刷すればたちまち他言語対応。「それだけ?」と侮るべからず。電力を一切使わないで済むため、あらゆる場所に設置ができる。従来の技術も工夫次第で、究極の省エネ・省スペース型の対応策となり得る一例だ。

すべての人に平等におもてなしを、という日本ならではの思いがさらにテクノロジーを進化させるのだ。

残らないものにまで宿る、ジャパニーズ・アイデンティティ

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最後に、取材班が本展の象徴と感じた事例を紹介しよう。気の利いた宿泊施設なら必ず置いてある、アメニティグッズ商社の出展だ。数々の大手コスメメーカーとのコラボレーショングッズだけでなく、和をモチーフとしたオリジナル商品の開発なども積極的に行っている。
非常に不躾だと思ったが「なぜ、使い捨てのものにそこまでこだわるのですか」と問いてみたところ、おそろしく明快な回答が返ってきた。

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「だって、その方がお客さまが喜ぶでしょ」
まさに本展を括るにふさわしいひと言と感じたが、いかがだろうか。

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旅行の楽しさ・快適さは、数々の企業が裏側から支えた結果だ。それが今、世界に向けて発信されている。2020年が観光業界のピークと予測されているが、それはきっと誤りだ。さらなる成長の通過点にすぎない。HCJ2016は、そんな明るい未来図を描くことができる展示会であった。

『HCJ2016』
■会期/2016年2月16日〜19日
■会場/東京ビッグサイト
■来場者数/5万5,858人(4日間計)
■出展者数/811(1,947ブース)

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