ようこそ、展示会!ビジネス・産業振興のために

一般社団法人日本能率協会
2016/02/19

裏側からのぞく、日本のおもてなし最前線。三展合同HCJ2016 <飲食・厨房編>

「一人前の寿司職人をめざすなら、飯炊き3年握り8年」なんて言葉がある。もちろん、これは寿司の世界に限られた話ではない。長い修行期間をかけて技を磨いた調理人がいるからこそ、我々は美食の数々に舌鼓を打つことができるのだ。しかし残念ながら、いま調理人の減少が深刻化しているという。熱い・重い・長いとハードな調理人の労働環境を見直すことで、この問題を改善できないだろうか。

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「“食”はね、誰もが評論家になれちゃうんだよね」そうつぶやいたのは、本展のJMA運営スタッフ。確かに、理論や知識抜きで好き嫌いを判断できるのは食ぐらいだ。ましてグルメ大国・日本において、客側の採点は厳しいだろう。もしかしたら、こうしたお国柄も調理人の負担を増やしているのかもしれない。

けれど調理人が減ったからといって、やすやすと店を閉めるわけにはいかない。ましてや外国人観光客の増加で、飲食店の需要は増えているのだ。

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厨房・フードサービスなどの飲食分野の最新機器が集結する『HCJ(※)』には、こうした業界の苦悩を解決する展示が並ぶという。一体どういうものがあるのか、さっそくレポートしていこう。
<HCJ2016ホテル・サービス分野のレポートはこちら>
※『HCJ』……ホテル・旅館・観光・各種施設の『国際ホテル・レストラン・ショー(HOTERES JAPAN)』、給食・中食・弁当の『フード・ケータリングショー(CATEREX JAPAN)』、厨房・フードサービスの『厨房設備機器展(JAPAN FOOD SERVICE EQUIPMENT SHOW)』、この3展示会の英文名称の頭文字を取った総称。

少ない人数・時間・負担で厨房を機能させる、最新機器の数々

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HCJ2016の目玉といえば、会場内をところ狭しと並ぶプロユースの厨房機器たちだ。あちこちの出展ブースから美味しい香りが立ちのぼる。匂いに誘われ取材班も近寄ってみると、ジュワ〜っといい音をたてながらコロッケが揚がっていた。「ずっと見張ってなくても均質のものが仕上がるよう、タイマーに合わせて自動で油から引き上げる仕様になっています。少ない人数でいかに効率よく厨房を回すかが求められているんですよね」と担当者。

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働く人の負担を減らす。これはHCJ2016の主題のひとつだ。そして、それをちょっとしたアイデアで実現した事例を発見できた。蕎麦専門の製麺機器メーカーが開発した、座ったまま作業できるマシンだ。これまで立ち仕事が当たり前とされていた製麺作業の負担を減らすことができる。素人目には簡単な改良に見えるかも知れないが、常識を変えるというのはシンプルだからこそ難しいのである。

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会場内をひと周りしてみたところ、熱風で調理するコンベクション・オーブンのプロモーションに力を入れるメーカーが多い印象だ。最新式の場合、加熱時間や温度のプログラム化が可能で、なかには冷凍機能までついているものもある。食材を仕込んでおけば自動で調理し、さらに傷まないように冷凍保存までされるというわけだ。大量調理が簡単にでき、働き手の労働時間をダイレクトに改善できるため、来場者からの注目も非常に高かった。

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冒頭でも寿司の話をしたが、回転寿司やスーパーの持ち帰り寿司など、職人が握っていない寿司のクオリティが年々上がっている実感はないだろうか。その理由のひとつがしゃり玉マシンの進化だ。米粒を長年研究してきたことで、米粒を潰さない絶妙な力加減が完成した。シャリ玉、のり巻き、おにぎりと、それぞれの形状ごとにマシンが開発されているが、とにかく早い!動画でお見せできないのが実に残念!

機械を進化させることで、人間の労働負担を減らす。これは、明解な解決策だ。こういった厨房機器は、今後ますます需要が高まっていくのだろう。

機械だけでは実現できない、食を楽しませる付加価値づくり

それではテクノロジーが発達すれば、調理人は完全にいらなくなってしまうだろうか。当然ながら、そんなことはない。“食”をサービスとして提供するための演出や楽しみ方の提案は、機械では賄えない領域だからだ。

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その一例がスイーツやコーヒーといった嗜好品である。最新のエスプレッソマシンはタッチパネルを搭載し、プログラムにより一定の品質のコーヒーが抽出されるようになっている。それでも淹れる人が変われば味も変わってしまうのだから、なんとも不思議な話である。「普段はやらないんですけどね」そう前置きしながらサッとラテアートを仕上げてしまったバリスタのコーヒーを堪能しながら、そんなことを考えていた。

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負担軽減ではなく、味を追求した厨房機械だってたくさん存在する。会場内にバーカウンターを模したブースでは、ガス石釜のデモンストレーションで注目を集めていた。周囲から一気に火を入れることで、食材の旨味が凝縮されるという。試食させていただいたが、肉は柔らか、野菜はホクホクでまさに絶品。

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“食”というのはシチュエーションも楽しみに大きく左右する。そして、なぜかいつもより食べてしまうと言えば…。そう、ホテルの朝食バイキングだ。食品メーカーが提供した食専用カレーやベーコンなどの試食を求め、来場者の列が途切れることはなかった。「朝に適したサッパリした味付けにこだわりました。HCJは出展するたびに問い合わせがあり、効果を実感できています。今年も期待していますよ!」と、担当者。

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“食”の演出といえば、食器だって重要な要素だ。日本だけでなく世界各国から製品を取り揃える商社では、シチュエーションやイメージを訴求させるディスプレイで来場者を魅了する。食器の世界にも流行はあるんだろうか?「もちろんですよ。これから来そうなのは、ビンテージ風味ですね」

食の楽しみとはなにか考えながら会場を歩くと、その幅の広さに驚かされる。だからこそ各分野ごとに専門職があり、個々のアイデアが新しい食の魅力を引き出していくのだ。

HCJ2016だからできる!ビジネスに直結した出会いの作り方

ビジネスツールとして展示会を効果的に活用していると感じた2つの企業を紹介しよう。

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1社めは業務用冷蔵庫などを手がけるメーカー。こちらの企業はブース内にホテル・レストラン・居酒屋・スーパーのバックヤードなどを見立てたミニタウンを作り、暮らしのなかでの企業の立ち位置を巧みに表現していた。今回、製品としては熱い液体もパウチできる機器などが目玉。とはいえ、ただ展示するのではなく使用シーンを想起させることで、常にユーザーの目線で開発をしているという自社のブランディングに結びつけている。

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2社めも業務用厨房機器の総合メーカー。こちらのブースでは通路に面した外周部分すべてにライブキッチンを設置。有名シェフが腕をふるうオープンキッチンやセミナースペースなど、来場者が足を止めたくなる計算になっている。

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さらにブース内側にはレストランスペースを構え、商談に発展する来場者限定で招待といった、特別感の演出にも余念がない。「ここまでできるのは、年間のプロモーション費の大半をHCJに割いているからです。ホテル・レストランといった、我々のど真ん中のターゲットに会える展示会は他にはありませんからね。毎年、効果は出ているので満足度は高いです」と、出展メリットを強く語っていた。

HCJに継続出展が多いのは、こうした長年の実績の成果だ。さらに、会場内には給食など大量調理における最新情報セミナーや、各種サービス技術を競うコンテストといった、さまざまなイベントが催されていた。こうした取り組みがさらに来場者を呼び、会場内の熱気は絶えることがなかった。

フードビジネスに携わる、すべての人に誇りと自信を

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最後に紹介するのは、70年以上の歴史があるユニフォーム企業。お世辞にも派手なブースとは言えないが、多くの来場者が足を止める。実はこちらの企業は、フランス最高峰ブランドから直輸入した製品を取り扱っているのだ。一般的なユニフォームと比べると値段はかなり高め。

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「このユニフォームはコック長など、自分のランクが上がったと実感できたとき選ばれるもの。いまはまだ手を出せないけれど、いつかこれを着れるよう頑張ろう。そんな憧れが仕事に対するモチベーションになるよう支えていきたいですね」。そう語る担当者の表情からは、フード業界に関わるすべての人に対して、応援と強い信頼があるよう感じられた。

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日本の食は「食べる」ではなく、「食べてもらう」に重きを置いて発展してきた。これこそ日本の食文化の原点。こうした日本らしさが、世界を魅了してきたのではないだろうか。本展で出会った、食を裏側から支える人々が、この日本らしさをますます発揮することで、日本の魅力をさらに強く世界にアピールできるはずだ。テクノロジー・アイデア・ホスピタリティ。そのすべてが集まるHCJは、これからの日本の底力を予感させる展示会であった。

『HCJ2016』
■会期/2016年2月16日〜19日
■会場/東京ビッグサイト
■来場者数/5万5,858人(4日間計)
■出展者数/811(1,947ブース)

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