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一般社団法人日本能率協会
2018/01/09

北海道の食と農が一挙に集結した、北海道の今と未来を見つめる展示会 『北海道アグリ・フードプロジェクト イベント&カンファレンス』

北海道アグリ・フードプロジェクト イベント&カンファレンスが2017年11月22日~23日、アクセスサッポロにて開催された。

北海道アグリ・フードプロジェクト イベント&カンファレンス

北海道の農家出身の漫画家・荒川弘さんの農業高校を舞台にした『銀の匙』や『百姓貴族』、獣医師学部が舞台の『動物のお医者さん』といった人気漫画により、北海道は畜産・農業が活発な地域というイメージが強い。

主催者セミナーの「北海道大学が目指す、これからの『食資源』教育・研究のあり方」によると、北海道大学では2017年春から「国際食資源学院」という大学院を新設したという。北海道大学の前身は札幌農学校だが、ここは日本において西洋風の農業や畜産の技術を他に先駆けて取り入れた学校だ。人口増加と世界各地で起こっている砂漠化など、将来食糧危機が起こることは目に見えている。それらの問題に取り組むための大学院という。明治の時代から日本の西洋化農業を牽引してきた北海道にふさわしい取り組みと言えるだろう。

地域の特性が色濃い出展者と北海道ならではの出展理由

展示会全体としては、地域性が特に色濃く出ていたと感じている。寒冷地であること、農地が広いことという特徴を捉えた商品が多い。保温素材のついたジャケットや、ドローンの出展が多かったことも印象深い。

ドローンの出展光合成促進機グロウエア

そしてアグリ・フードプロジェクトというプロジェクト名からもわかるように、アグリだけではなく農産物の紹介・販売があったことも特徴だ。生産者が来場者としてだけではなく出展者としても参加できる取り組みで、北海道の食料に関するすべてを網羅できる展示会となっていた。

茶所で有名な出展者は、地域茶ブランドの周知のために出展したという。最近は個人でお茶を入れる習慣が減り、茶葉の売上が減っているという。お茶を入れないということはすなわちペットボトルのお茶のほうが、親しみがあるということ。「好きなお茶」と聞くと、産地ではなく、ペットボトルの商品名を挙げる若者が多いという。筆者は狭山茶どころ出身なので、その話は淋しい限りだ。この企業では、抹茶のほかに紅茶や玄米茶のパウダーを製造している。これらをスイーツや飲料に利用してほしいという。今回の出展は、そのバイヤー探しだ。

京都宇治茶都茶寮宇治抹茶

これまで各所の展示会に出展してきたが、そこで北海道のバイヤーに出会うことがなかったという。いろいろと聞いてみると、道内のバイヤーは、道外まで商品を探しに出ることが少ないというのだ。それではと聞いたことから「販路を広げるには北海道に乗り込むしかない」と出展を決めたらしい。

北海道と一口に言っても、関東から東海、関西地方を含むほどの広さがある。自給率が高ければ、道外の売り先を考えなくとも済むのかもしれないし、それ以前に移動にかかる手間が大きいようだ。北海道の豊富な食材と、自社の製品を組み合わせて商品化を考えるのならば、こちらから現地に乗り込むのが手っ取り早いだろう。

六次産業化や地域創生のかたちと、展示会の活用方法を探る

六次産業化を進めるにあたって、農家がすべての工程をまかなう必要はないようだ。米農家からお米を納品してもらい、本みりんを作って瓶詰めし、依頼者に戻すサービスを行っている出展者がいた。米のブランドによって出来上がるみりんの味が異なるそうで、オリジナルのブランドみりんの製造が可能だ。大がかりな設備投資をしなくても、自身のブランドみりんができるのは魅力だ。ブースでは、みりんを煮詰めて作った「煮切りみりん」の試食を提供していた。アルコール分が飛び、砂糖代わりに使えるシロップ状の液体だ。クラッカーにつけて食べたが、さっぱりとした味わいで美味しい。最近は調理に本みりんを使わず、みりん風味で代用することも増えているようだが、味にこだわるならだんぜん本みりんだ。

本みりん本みりん出展者

大手企業が地域創生に取り組んでいることも印象深かった。トマトジュースで有名な出展者は農家に生産を委託し、加工までを産地でまかなう。販売を食品メーカーが担うという仕組みだ。また別の出展者は、生で食べても辛みのないタマネギを開発している。こうした大手食品メーカーの地方支援の取り組みを知るのに展示会はいい機会だ。例えば東京で「北海道の農家と契約して加工まで現地で行っています」と言われてもピンとこないが、今いる場所に関する創生の説明があると臨場感がある。北海道出身者や居住者ならなおさらだろう。

トマトジュース食べても辛みのないタマネギ

直接消費者への販売を行っていない企業の出展もあった。商品は、コンバインなどに取り付けるコイルやネジなどだ。出展の理由を聞くと、「直接消費者の方の意見を聞いてみたかったんです」という。実際にどういった要望があるのか、何に満足をしていて、どこに不満があるのか、生産者の方たちから生の声を聞いたそうだ。同社が通常取引するのはメーカーだが、生産者の声を無視するわけにはいかない。担当者は「厳しい意見が多くて……」と悩ましげだったが、今後の開発の指針になることは間違いない。実際の消費者から遠い立場にいる企業ほど、展示会の利用価値は高そうだ。余談だが生産者の方は部品を見ただけで「ああ、タインね」とわかるのだとか。形状に見覚えがあっても名前まで浮かぶということは、いかにその部品が重要かを物語っているではないか。

緩衝フックスプリングコイルやネジの出展

また、人目を惹いていたのは、パイプのデモンストレーションだ。自社の新製品であるパイプがどれほどの強度、柔軟性があるかを実際に重りをつけて他社製品と比較している。パイプが重りに耐えかねてぐにゃりと曲がるときには、大きな歓声が漏れた。このように、商品が大型の場合や、性能を説明しにくい場合などは、展示会でのパフォーマンスが効果的だろう。映像や資料で見せられるのと、目の前でダイナミックに紹介されるのでは、残る印象がまったく違う。

パイプのデモンストレーションパイプのデモンストレーション

家族連れで賑わったフードコーナー

23日は休日ということもあり、会場には多くの子ども連れの家族が押し寄せた。これもアグリの展示会ではあまり見られない光景だ。JAブース「JAグループ北海道フェスト」では各地の名産品が並び、さまざまな試食を提供している。正直、ここを回ればランチがいらないのではというほど、各ブース自慢の味が堪能できた。

ホクレン パン牛乳屋さん

フードコーナーフードコーナー

ステージ企画プログラムでは「バターってどう作るの?」というバターづくり体験が開催された。これらの企画は、将来の就農者を増やそうという試みだ。そのほか疑似牛による乳搾り体験など、子どもたちに農業体験をしてもらうイベントが開催された。「バターづくり体験」では、子どもたちに実際にバターを作ってもらいながら、その仕組みを解説する。生クリームの中には、脂肪球という丸い脂肪の球が入っている。生クリームが入った瓶を強く振ることで、この脂肪球をつぶして、中から脂肪分を取り出すという。するとつぶれた脂肪の塊と水と空気が混ざり、ホイップ状になる。さらに振っていくと、水と空気と脂肪分に別れ、バターが出来上がる。残った水分は無脂肪牛乳とのことだ。こうした学習から酪農や科学に興味を持つ子どもたちが出てくるだろう。

バターづくり体験バターづくり体験に参加する子ども

疑似牛による乳搾り体験疑似牛による乳搾り体験

その他、的にボールを当てるゲームや、風船などが配られ子どもたちの目を引いていた。子どもたちが美味しいものを食べ、遊び、学習し、農業に触れ合う場として定着すると効果的だろう。

北海道の明るい未来を予測させる取り組み

日本能率協会の本展示会の担当者に話を聞いた。

「私たちは今、北海道アグリ・フードプロジェクトという企画を推進しています。これは3つの柱からなっていて、ひとつは学習や交流、もうひとつはイベント、そして実行委員会からの提言です。学習と交流は、今冬から始まりますが、3年間に渡って農業経営者を育てていきます。これらをひっくるめて、北海道アグリ・フードプロジェクトと呼んでいて、この展示会は、そのイベントの部分に当たります。これまで九州、東京でアグリの展示会を開催してきましたが、北海道が大きく異なるのは、そこにフードが入っていることです。主催は日本能率協会ですが、企画団体は「北海道アグリ・フードプロジェクト実行委員会」で、JAグループ北海道や、北海道大学、株式会社北海道二十一世紀総合研究所らで、さらに道や市、関連団体から後援もいただいています。いわばオール北海道ですね。北海道は一次産業が盛んですから、生産者が元気になれば、北海道全体がよくなっていくという考えです。その強力なサポートをしていくつもりです」

日本能率協会の本展示会担当者

北海道は、自給率が人口を大きく上回る、日本でも珍しい地域だ。これまでは「生産者」として、作ったものを出荷することがメインだったが、今後は道内で加工、販売まで手がける道筋を立てていかなければいけないという。生産者として道外のメーカーに卸すだけでは、利益が還元されないからだ。

農業は高齢化や人手不足など、まだまだ課題が多い分野ではあるが、展示会ではそのようなネガティブな様子はまったく見られなかった。北海道大学は日本を牽引すべく学院を立ち上げた。JAグループは、若者たちが声を張り上げて製品の試食を勧め、アピールをしている。これからの北海道は、これまでとはまた別の形で、日本の食や農業を牽引していく地域になるのだろうと思わせる活気があった。

それにしても、北海道は本当に食べ物が美味しい。滞在期間中は「何を食べるのを諦めるか」が悩ましいほどだ。これが道外の食品や技術と結びついたら、北海道ブランドはより盤石になるだろう。

北海道アグリ・フードプロジェクト イベント&カンファレンス

■会期 / 2017年11月22日・23日

■会場 / アクセスサッポロ

■来場者数 / 7451人(2日間合計)

■出展者数 / 112社(138ブース)

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