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一般社団法人日本能率協会
2017/12/25

さまざまな最新技術が『HOSPEX Japan 2017』に登場! 医療・福祉現場の将来に欠かせなくなった“IoT”

医療・福祉業界の進化を推し進めるIoTのいま

11月20日〜22日の3日間、東京ビッグサイト(東京都)で開催された『HOSPEX Japan 2017』(以下、HOSPEX)のレポートをお届けする。病院・福祉分野の総合展示会であり、400社、650ブースが出展。3日間で合計2万1453名が来場して賑わった。本稿では主にHOSPEXで見かけた興味深いIoT(Internet of Things)関連の展示をまとめる。総合的なトレンドについては別記事を参照してほしい。

HOSPEX登録所の様子会場の様子

近年、さまざまな分野で“IoT”という言葉を見かけるようになった。IoTを平たく言ってしまうと「IPアドレスを持ち、他のデバイスと連携動作する機器」となる。家電や工業製品に留まらず、医療や福祉の分野でもこうしたIoTデバイスが増えているのだ。

この背景について、本展示会の担当者は「IoT化は病院の設備や患者の見える化につながっています」と指摘する。

「病院も少ない人数でとどこおりなく経営が回せる仕組みを求めており、そのためにはIoTの導入で設備がどうなっているのか、必要な道具がどこにあるのか、患者がいまどんな状況なのか、見える化することが非常に重要なのです」

分かりやすい例として挙げられるのが、利用する患者の状態をセンサーで検知して、それをネットワークに集積して運用する“スマートベッド”だ。

スマートベッドの展示スマートベッドの展示

大手のベッドメーカーが早くからスマートベッドに取り組んできたこともあり、寝心地や起きやすさ、食事や点滴、患者の世話などに関わる機能性は、各社とも非常に高い水準に達している。このため、各社がどう差別化を図っていくのかという段階になっている。ここでIoTが注目されるわけだ。

実際、今回展示されていた各社のスマートベッドは、マットレスの下に圧力センサーを設置するタイプが主流で、ベッドを利用する患者が何も装着していなくても、心拍、呼吸、姿勢、離在床等を検知し、ネットワーク経由で管理する。この点まではほとんど同じだ。圧力センサーなので体温は計測できないが、患者が動いていなくても睡眠中か覚醒中かは分かるという。ベッド脇の床にセンサー付きのマットを敷くことで、ベッドに腰掛けている状態が検知できるものもある。

ここから先をどう工夫するか。たとえば、入院患者のベッドサイドに端末を設置し、体温計や血圧計などのベッドサイドのバイタルサイン測定機器とも連携して電子カルテと紐付ける。これにより、患者の状態を医師やナースが離れた場所から24時間把握できる仕組みもある。

どの部屋のどの患者が現在どんな状況かひと目で把握できるのはもちろん、患者の心拍や呼吸が設定した閾値を越えた時に自動的にナースコールする仕組みも提案されている。

スマートベッドの展示スマートベッドの展示

電子カルテとはあえて切り離し、ベッドのセンサーの状況だけ集中管理できるタイプもある。こちらの場合、入院患者が頻繁に入れ替わるようなときでも簡単な引き継ぎで運用できる導入の容易さが魅力となっている。このほか、在宅介護を想定して標準的なベッドに据え付けるセンサーや、ユニークなものではベッドに横たわったまま髪や身体が洗えるシステムなども提案されていた。

多目的ベッドの展示ベッドの展示

ベッドの展示介護見守りシステムパネル

情報のクラウド管理や映像の配信などIoTが浸透

センサーでチェックしたデータをクラウドで管理するプロダクトももちろん多数散見された。ただ、センサーとクラウドを紐付ける発想自体はそれほど真新しくないためか、会場の1カ所に集められてはおらず、各社のブースの中で工夫されたものが光って見えた印象だ。たとえば、車椅子に乗ったまま測れる体重計や、超音波で正確に測定できる身長計などが計測値をクラウド管理できるのは、健康診断などでニーズが高そうだ。また、薬包にICタグを取り付け、遠隔地から患者の飲み忘れを確認できるシステムなども参考出展していた。重量センサーなどと組み合わせるなどすればより精度も上がりそうだ。

seca Precision for health展示seca mBCA展示

CarePod展示

このほか、ネットワークを活用したものでは、院内の複数カ所に設置して運用するネットワークカメラも目を引いた。病室や診察室、手術室など院内を一元的に監視できるものや、手術映像記録・配信システムも展示していた。後者はネットワークカメラの4K映像と2K映像の記録・配信・視聴をWebブラウザベースの環境で混在でき、サムネイル画像と医療情報を併せて表示可能なので、複数の手術室を持つ大型病院などで引き合いがありそうだ。

院内監視ソリューション手術映像記録・配信システム

求められているのは人材不足を解決する提案

最後に将来を見据えた技術もいくつか紹介しておこう。

まず注目しておきたいのが自律式の搬送ロボットだ。ペットボトル2本分程度の小さな荷物やカルテなどの書類をデリバリーするためのものだが、目的地をセットすれば自律的に走行し、進路上に人や物があれば避けたり止まったりし、エレベーターも自動で乗るという。機密管理も人が扱うより確実。人手不足に悩む施設で、ちょっとしたデリバリーに時間を取られるのを避けたいといったニーズにはうってつけだ。

遠隔医療の展示デリバリーロボットの展示

遠隔医療も昨今のキーワードのひとつ。特にロボットの支援で実現する遠隔手術は産官学挙げての研究が進められている最先端の分野だ。視覚や聴覚と異なり、触覚はロボットによる再現が極めて難しいとされる。遠隔手術の際に血管を破くことなくつまんだり、肌を縫合したりといったことは、この触覚をどこまで操れるかが鍵を握る。

「次世代医療・福祉体験コーナー」の一角では、物に掛ける力と反発する力を人間の手にフィードバックするデモンストレーションが実施され、来場者の足を止めていた。

身体感覚を伝送する双腕型ロボット展示の様子

双腕型ロボット

最後に紹介したいのは、VR(Virtual Reality:仮想現実)の活用だ。ヘッドセットを装着すると顔の向きに合わせて360度、上下左右に仮想空間が表示される。ゲーム業界での進歩が著しい分野だが、医療や福祉の世界では病院を建設したり、リフォームする際に、診察室や待合室、手術室などのレイアウトを工事前に確認する用途への活用が期待されている。

VR内装体験システム3D模型作成サービス、3Dプレイス

本展示会担当者は「今回のHOSPEXには出展されていませんが、将来はVRやARを教習用や訓練用のツールに使うコンテンツも見られるようになると思います。ただ、医療や福祉の教習は対人で行った方が良いという慣習が根強く、まだ時間が掛かるかもしれませんね」と言う。だが見方を変えれば“これから来るビジネスチャンス”とも言えないだろう。

HOSPEX担当者

今回のHOSPEXでは、IoTに限らず、医療や福祉に従事する労働者の負担軽減や、業務効率の向上につながる提案が多く見られた。次回のHOSPEXでは、もっと進化したソリューションが見られるのだろう。製品や技術のある企業には、ぜひ業界の進化をリードする出展者としての参加を期待したい。

HOSPEX Japan 2017

■会期 / 2017年11月20日〜22日

■会場 / 東京ビッグサイト

■来場者数 / 2万1453人(3日間合計)

■出展者数 /400社(650小間)

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