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一般社団法人日本能率協会
2017/11/15

日本初、トマトに特化した展示会が開催 『アグロ・イノベーション2017』

10月4日~6日まで、東京ビッグサイトにてアグロ・イノベーション2017が開催された。
展示の目玉は、なんといっても「トマト・イノベーション」だ。トマトにフィーチャーしたコーナーを設け、出展者には「トマト推し」を呼びかけた。約30種類のトマトを食べ比べできる試食コーナーを始め、トマトに重点を置く出展者が多数集まった。

トマトが農業に革命を起こす

ここ近年、トマトの人気はうなぎ登りだ。以前は大玉の桃太郎かプチトマトくらいしかスーパーで見かけなかったものだが、今では色も形も、よりどりみどり。注目度の高さが伺える。

トマトは育てやすく、農業初心者が入りやすいという。出展者である小売企業の広報担当によると「葉野菜や根野菜は、ひとつの種からひとつ収穫したら、それでおしまい。しかしナス科の植物は、ひとつの種からいくつも実がなるため効率がいい」とのこと。ナス、ピーマンなど同じナス科の野菜も多く、培った技術が転用しやすいのもメリットだ。

トマト試食イオン

注目度の高さは、この出展者の取り組みからもわかる。2017年6月より埼玉県久喜市にある大玉トマトのみの農場から本格出荷を開始した。ここは農林水産省の次世代施設園芸導入加速化支援事業の1つで、3.3ヘクタールのハウス内はすべてトマトだ。見渡す限り地平線まで続くような広さの土地にハウスが並ぶ。年間990トンのトマトを生産できるという。次世代施設園芸導入加速化支援事業は、生産から調製・出荷までの施設の大規模な集約化を行う。地域資源エネルギーやICTを活用した高度な環境制御を行うことにより、低コストな周年・計画生産を実現。農業者の所得向上と地域の雇用創出を目的とする事業という。安定的に一定量を供給できるよう完全にコンピュータ管理されており、湿度、二酸化炭素量などを自動制御できる。地域の高齢者でも作業ができるよう「低段密植」といって、大人の背丈ほどの位置でトマトを収穫する方法を採用している。

装置トマトジュース

3年連続で50トンの大玉トマトの生産を達成した施設もある。太陽光を利用した植物工場だ。豊橋市などの支援を受けた研究施設で、より高度な施設栽培を目指している。ここで培った技術は一般に提供されており、これにより生産者は収量増加や品質向上による経営の安定化が見込めるという。施設は見学可能で、個人・団体ともに受け付けている。公式サイトの見学会のページから応募できる。

ブランド化が進むトマトの最先端事情

試食コーナーで目を引いたのは、サンドイッチ用のトマト「サンドパル」だ。食べてみると、サクサクとした食感で、味がほとんどない。話を聞いた出展者によると「このトマトは、サンドイッチにして持ち歩いても水っぽくなりにくく、食べやすいのが特徴です。種が入っている”部屋”は、通常4つですが、このトマトは8つあります。そのため形が崩れにくく、かじってもゼリーがこぼれにくい。他の具材の味を邪魔しないシンプルな味で、まさにサンドイッチのために作られた品種です」という。一般での販売は予定しておらず、惣菜メーカーやレストラン、小売りへの営業を考えているとか。確かにトマトの入ったサンドイッチは水分が出てしまい、美味しく作るのが難しい。こうした加工用のトマトがメーカーに卸されるようになれば、ますます既成の惣菜が美味しくなり、一般家庭の家事の負担が減りそうだ。

ミニトマトカットトマト

トマトトマト

試食コーナーには、赤だけではなく白、黄、オレンジ、紫と並び、今や色とりどりのトマトが提供されていることが改めてわかる。これらをキャンディやフルーツのようにかわいらしく包装して詰め合わせれば、贈答品になる。果物とはいえ糖度が高い種もあり、トマトはフルーツにもなりえる価値を持つようになった。

こうした流れを後押しするのが、パッケージングの器材にもある。この出展者の小型包装機は、包装材には好きなデザインを印刷でき、クッション材と一緒にパッケージングできる。袋自体が自立するため、中に入れた商品に傷がつきにくく、ディスプレイもしやすい。トマトなどの農作物を包めば、それだけで高級感が増すだろう。

3日間にわたって開催されたトマト・イノベーションのセミナーは17講座。「高付加価値トマトの安定生産を実現する!!~IT活用と生産農場の体制づくり~」「国産大玉トマト50t/10aを達成した栽培管理」といった興味深いタイトルが並び、どれも立ち見が出るほど盛況だった。トマトの栽培に限らず、農業を経営していくヒントがたくさん詰まっていたはずだ。

今後の展開が見逃せないトマト・イノベーションの未来

トマト・イノベーションという、なにかの作物に特化した企画は今回が初だ。この試みはどんな反響があったのか、本展示会担当者に話を聞いた。

「テーマを決めたことで、出展者のみなさんがそれに合わせた内容を考えてきてくれて、全体として展示会のイメージができたかなと思っています。試食のコーナーでは、各社とびっきりのトマトをその場で食べ比べができるということで、多くの来場者が集まりました。来年以降、どの作物にフィーチャーするかはまだ検討中ですが、今候補に挙がっているのは、イチゴやパプリカです。来場者の方にアンケートを実施しているので、参考にしながら決めていきたいと思います」

市場で注目株のトマト。育てやすさと、技術の転用のしやすさだけでなく、種類の豊富さからもその理由が伺える。これまでは主に赤い彩りとして利用されることが多かったが、今後はフルーツのようにトマト単体で利用される機会も増えそうだ。美しくパッケージングし、「おいしさの見える化」で品質の情報を提供すれば、安さ勝負ではない高級ブランド化ができる。
トマト・イノベーションのセミナーで語られた「『命に関わる』基礎食料は、市場原理に載せると安く買い叩かれる運命にある」という言葉が印象的だ。一方で「『命に関わらない』、なくても生活できるコンピュータ関連のほうが高く売れる」という。農業国アメリカでさえ、農業はGDPの1.2%といい、その割合が増えるとエンゲル係数が高くなり、国民の生活を圧迫する恐れがある。そのため基礎食料を生産する農家は儲からない経済的宿命を負っている。そのため、「何を商品にするのか」を考える必要があるという。

基礎食料としてのトマトと、嗜好品としてのトマト。この両立が答えのひとつかもしれない。そして「何を育てるか」「どう商品にするか」を考える情報を提供するのが、このアグロ・イノベーションだ。来年以降、どの作物にフィーチャーするのかも見逃せない。

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アグロ・イノベーション2017

■会期 / 2017年10月4日~6日

■会場 / 東京ビッグサイト

■来場者数 / 1万1326人(3日間合計、他の同時開催展の入場者数を含む)

■出展者数 /92社/213ブース

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