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一般社団法人日本能率協会
2017/11/15

農業の未来をつくる、出会いと発見の場 『アグロ・イノベーション2017』

10月4日~6日まで、東京ビッグサイトで開催されたアグロ・イノベーション2017。
業界での注目も高く、盛況に終わった3日間だったが、その概要を紹介しよう。なお、メインテーマであったトマト・イノベーションは別記事にて紹介する。

農業の「困った」を解決する製品と出会う

日顕リース展示担当者

農業に参入する際のネックになるのが、初期投資だ。ある出展者は、ハウスの骨組みに当たるパイプのリースを開始した。
もともとは建築現場などで使用する足場のリースをしている会社だ。2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、大量の受注があるが、その後は冷え込むという予想。その代替えとして目をつけたのが、農業だという。10月からサービスを始めたばかりの、最新商品。ビニールなどは別途購入する必要があるので、ハウスを販売している代理店などに営業予定だという。

講演の様子

画期的なのは「おいしさの見える化」システムというサービスだ。スマホのアプリから農産物の写真を撮ってデータを送信すると、甘味、塩味、渋味などの比率を計測してくれる。大掛かりな装置もいらず、商品をミキサーにかける必要もない。撮った画像の色味から、その作物に含まれる栄養分を割り出すという。安価な金額で利用できるため、導入しやすいことも大きなメリットだ。農家が利用すれば、栽培方法の研究ができたり、個人で販売する際のブランディングが可能だ。小売業で使えば、やはり差別化ができる。同じような見た目のトマトでも、味覚がグラフで表示されていれば、消費者にもどんな味が想像しやすい。例えば糖度が高いトマトなら、値段が多少高くても購入意欲が湧くだろう。商品のブランド化が可能になる。

温度管理に湿度調整など、今や農業にICTは欠かせないように思われる。一方、別の出展者は、その流れに対抗するアナログ商品で逆張りする。震災時に我々は、大規模な停電を経験したとき、アナログの安定性の高さを実感した。あまり電力に頼りすぎるのも、生活や生産に支障が出るのかもしれない。ハウス内の温度によって自動的に弁が開く空調機だ。この製品は電力を必要とせず、設置するだけで作動する。IoTなどの大がかりなシステムを導入するほどではない小規模農場や、機械に疎い方に提案したいという。

共同ブース虫の侵入を阻む網

また、「別の企業とコラボして、よりよいサービスを提供できることを示したかった」という出展者もいる。展示会の場でも積極的に他のブースの商品を見て回り、交流を心がけているのだ。「自社の製品と組み合わせてより効率が上がるサービスがあれば、どんどん協力をするべきです」という。生産者の立場で商品を提供するなら、自社製品だけではなく、よりその生産者のメリットになるシステムを提案するべきだ。

技術の進歩に驚愕、高齢化や人手不足は技術で解決できる!

農業は高齢化と人手不足が深刻だが、その問題を解消する施策が、さまざまな形で進められている。セミナーでは、障がい者を雇用し、生産力をアップさせた事例が紹介された。雇用の幅を広げることも、人手不足の解消につながる。

出展者である小売企業では全国に21カ所の農場を持ち、そこでは農学部出身など、農業に興味がある若手の社員が働いている。農場は、地域の農家から借り上げているという。地域によって作物の作り方が異なるため、経験豊富な地主の方々には指導者として指導を行ってもらうという。人手不足や高年齢化により農家を続けるのが難しくなった農家にとっては、土地の賃貸料と指導料が入り、安定的な収入につながっている。その上、指導者からは「自分たちの知識が活かせて嬉しい」「熱心に話を聞いてくれるのが楽しい」という声が寄せられ、生きがいにもなっているという。

陳列された野菜野菜の情報

また自社で農園を持つことで、販売までの流通にかかる時間のロスを大幅に減らすことができる。通常4回程度市場や拠点を経由して運ばれる農産物が、直送または1回拠点を経由するだけで店舗に並ぶ。直送なら3~5時間、拠点を経由しても24時間以内だ。この出展者の取り組みは、地方に店舗を構えることに加え、農場を構えることで生産・販売の双方から地域を支えている。

人手不足を技術で補う方法もある。
農業機械メーカーである出展者は、無人で作業ができるトラクター「アグリロボトラクタ」を発表した。農場までは自分で運転をしてトラクターを持って行き、耕したい場所にトラクターを入れる。どんな作業を、どういう形で行いたいかをメニューから選択して、スタートさせるだけ。一度耕す農地の形を記憶させれば、翌年度からはデータを取り出すだけで計測は不用。自動といっても完全に放置してよいわけではなく、管理者が必要だ。そのため、最も効率のよい使い方は、2台目として購入することだという。自分はすでに持っているトラクターを運転しながら、「アグリロボトラクタ」を自動運転させる。2台同時に作業できるため、作業時間は1/2程度に圧縮できるだろう。

大規模農場といえば、オランダ。Van der Hoevenは、日本初となる大規模な温室施設を岡山県笹岡市に建設中だ。128,269 m²という広大な土地に、レタス、トマトとピーマンを栽培する。
日本の高い湿度や温度に対応し、吸湿・断熱・冷却にかかるエネルギーを再利用し、消費電力を抑制する。ここで培った技術は今後、東南アジア進出への足がかりとするという。もともとオランダは日本に農業技術の提供を行っているが、今後ますます両国の関係を深めていくことになりそうだ。

経営改善や問題解決の突破口は展示会にある

今、東京オリンピック・パラリンピックに向けて注目されているのがGLOBAL G.A.Pだ。欧米を中心として124カ国17万農場以上(国内では約400農場)が取得している。しかし名称のイメージだけが先行している問題もある。GAPを取得すると農産物にマークがつけられ高く売れるとか、家族経営の個人農家には手間ばかりかかるため必要ないといった認識の生産者が多いという。GAPは、農場でのリスク管理を実践することであって、製品の認証をするのではなく、工程の認証であること。家業でも企業でも、経営を考える上で必要な取り組みだということだ。認証の内容は食品安全、労働安全、環境安全に大きく分けられ、農薬の取り扱いや清掃、免許や資格取得、救急箱の設置、環境に優しい資材を使うことなどだ。こうした項目に問題がある農場は、非合理的で信頼が低下し、それによる経営悪化に陥る危険がある。安全な食は健全な経営の上に初めて成り立つものだろう。また農作物そのものに認証マークをつけて差別化することは、同じ小売店で「安全ではないもの」も混在していることになる。ヨーロッパではGAP取得は当たり前、持っていない農場は小売業者に生産物を買ってもらえないという。

本展示会担当者は、
「農業における労働力不足を解決していくためには、人手のかからないシステムが必要となります。また生産者さんは今後、販路開拓をして行く必要があると思いますが、小売りスーパーに卸すなら一定の量と品質を保たないといけません。経験と嗅覚だけでは経営は難しくなっていきます。目に見える管理が必要で、そこにICTは不可欠なのではないでしょうか」
と語る。

農業が抱える問題は、労働者不足や経営力など、問題点が明確になっている。その分、改善点の提案がしやすいため、各社総力を挙げて問題解決に取り組んでいるようだ。印象的だったのは「IoTやAIを利用した農作物を管理すれば、それだけですべてが上手く行くわけではありません。データを蓄積し、活用してよりよい農産物を作ることや、経営の安定化を目指す思考がなければ意味がないのです」という出展者の言葉だ。展示会では最先端のサービスや技術が立ち並ぶ。それをどう取り入れるかは生産者次第なのだろう。そこが生産者に求められる経営力とも言える。

農作物を「美味しさの見える化」で差別化してブランディングしたり、GLOBAL G.A.Pを取得して農場そのものの信頼度と経営力を高めるなど、できることはまだまだたくさんある。札幌ではIT企業と農業をリンクさせる試みも始まった。このように農業へ新規参入する企業も増えている。出展者同士の出会いにより、新たなサービスが立ち上がることも期待したい。農業の可能性を改めて強く感じる3日間だった。

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アグロ・イノベーション2017

■会期 / 2017年10月4日~6日

■会場 / 東京ビッグサイト

■来場者数 / 1万1326人(3日間合計、他の同時開催展の入場者数を含む)

■出展者数 /92社/213ブース

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