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一般社団法人日本能率協会
2016/04/20

あたりまえの安全を、より確実に。『駅と空港の設備機器展』

世界の駅乗降者数ランキングの上位は、日本の駅が独占しているという話を聞いたことがある。確かに、首都圏の満員電車を体感したことのある人ならうなずけるだろう。ちなみに、最も乗降者数が多い新宿駅は、JRだけでもその数なんと1日に75万人近く(※)。地方都市の人口をはるかに上回る数だ。これだけ利用者が多く、運行状況が過密なのにもかかわらず、“安全性”と“正確性”に関して、日本の交通インフラはトップクラスだというから驚く。
「徹底した社員教育をしているからね」としたり顔で語るのは、このルポのディレクター。本人が鉄道オタクであるだけでなく、鉄道会社に勤める家族までいる筋金入りだ。「でもね、システム面での改良の余地はまだあるだろう、って話も聞いたよ」
ということで、今回の『駅と空港の設備機器展』と『バスと車両の運行システム展』では、交通に関する“安全性”にフォーカスして取材することに決定! ではさっそく、展示会場へとご案内しよう。
※JR東日本HPより。2014年度のデータ。

最新技術で、利用者のさらなる安全を守れ。

鉄道における人身事故には、乗降客側に過失がある場合も多いと聞く。が、運行側としてもそれを未然に防ぎ、利用者の安全を守るためのシステムが求められている。最近はよく目にする、駅のホームに設置されているホームドアもその一つ。このホームドアが、さらなる進化を遂げていた。

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従来のホームドアは安全性の向上に役立つ一方で、その重さは1台が400kgほど。設置するにはホームの補強工事が必須であり、コストの面からホームドアを設置できない駅も多かった。そこで考案されたのが、写真のようなバータイプのホームドア。扉ではなくバーにすることで重さは6割程度になり、これまでよりも低いコストでの設置ができる。線路転落や挟まり事故などの防止に、設置が可能になる駅が増えることが期待されているのだという。

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かわってこちらは、車体の振動を測ることで重心を割り出し、横転事故の危険を感知する装置の展示。元々はトレーラートラックの横転事故が多発していたことを受け、研究開発が開始されたものなのだそうだ。トラックが危険な運転をしていないのに横転してしまうのは、積荷の重さや位置によって変わってしまう重心を運転手が意識できず、バランスを崩してしまうことが原因。そこで、常に荷台の重心の位置を可視化し、バランスを崩す危険が感知された場合には運転手にアラートが出されるシステムが開発された。

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このシステム、「車高の高いバスやハイヤーでも活用していただきたい、ということで今回の出展となりました」。実際にいくつかの運航会社での導入も開始されたとのことで、車両の安全に一役買ってくれるという大きな期待がもてそうだ。
「こういうのがほしかったんだよ!と感動してくださる方もいますね。これまでは事故が多いとはわかっていてもなす術がないのが現実だった。これからきっと事故は減っていくはずですよ」と嬉しそうに語る研究者の笑顔が印象的だった。

オリンピックも間近。
テロ対策はどうなっている?

こちらは、空港や線路への侵入者を感知する装置などを取り扱う企業のブース。近年はテロ対策や不審者対策などの安全措置に感心が高まっているだけに、多くの来場者が集まっていた。

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この金網に設置されているのは、光ファイバーを用いた振動センサー。風による揺れと侵入者がよじ登った際の大きな揺れもきちんと区別し、侵入者の可能性が高い揺れの場合は管理モニターに警告が送られるというものだ。これまでは電気信号を用いた侵入者センサーが主流であったが、そちらに比べて落雷や腐食に強いという点でいざというときの確動性の高さがウリなのだとか。

一見普通のICカードを使った自動改札ゲートに見えるこれは、なんと爆発物探知装置の役割を果たしている。ICカードをかざすと通常の改札のようにゲートが開くが、同時に手元へ「プシュッ」と強いエアーがかかる。このエアーが、爆発物を持ち込んでいる可能性のある不審人物を感知してくれるというのだから驚きだ。

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爆発物を取り扱った人物の身体には、洗っても簡単には落ちない爆発物特有のオイルや微粒子が付着している。その付着物を手元のエアーが感知し、危険が感知された場合には通過した人物をマーキングできるという仕組みとなっているのだそうだ。これまでは海外でも似た検査が行われていたが、全身にエアーを浴びせ30秒ほどかかる、その時間がネックになっていた。これは爆発物を扱っていれば必ず触れるであろう手に着目し、検査をたった2,3秒で行える簡便なものになっている。タッチして進むゲートであるため、「駅や空港はもちろん、その他さまざまな施設で応用していけるはず」だと担当者は語る。

人の負担を減らすことも、安全性の向上につながる。

「働く人の負担を減らすことが、本質的に安全につながっているはずだ」という理念から、製品やシステムの開発を行っている企業のブースもあった。

こちらで紹介してもらったのは、バス運転手の運行をサポートしてくれる製品だ。バスの運行はほとんどがワンマン運転。日々変更になる担当路線や、時刻表を頭に入れながら、交通状況を判断し、乗客から質問があるなど社内で起こったことにも全て対応する。運行中のバス運転手の負担と言うのは、私たちの想像以上に大きいものであり、大きすぎる負担は安全運行の妨げになりかねなかった。

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写真の機器は、タッチパネルで路線を選べばどの路線でどのバス停に向かえばいいか、そしてその時点での時刻表との誤差がどれくらいかを全て教えてくれる。いちいち暗記したり確認したりしていたことが、これ1台で済むようになり、運転手の負担の大きさから起こるバス車両の事故軽減に大いに役立ってくれそうだ。

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同じく、働く人を楽にすることで安全の質をあげようと考えて生まれたのが、空港などで使われるこちらの空港無線である。一見普通の無線機のように見えるが、ちょっと違うんです、これが。使う人の持つ機器自体とマイク部分が無線になっている。つまり、マイクを手に持たずに、いわゆるハンズフリーで通話ができるので、業務効率が上がることはもちろん、いざというときの行動がより確実に起こせるようになるとのことだった。

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「まったく新しい技術やこれまでになかったような製品ではないけれど、こういう小さな改良こそ大切」と担当者は言う。「業務従事者の負担が少し減れば、その減った分だけ利用者を気遣うことができる。そのほんの少しを、追求し続けることが大切なんです。それが結果的に安全性の向上につながるのではないでしょうか」

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事故防止、テロ対策、快適な運行、業務従事者の業務の質向上。ことさら交通に関しては、“安全”と一口にいっても考えなければならないことはたくさんある。そのなかで、人の手や人の目で確認することも重要だが、新たな技術・システム・製品によって、より広く、より確実な安全が達成されるのであろう。
これからは、電車に乗るときも、空港へ行ったときも、ちょっと自分で確認してみたくなる、そんな普段は気付かなかった安全を支える技術を知ることができる展示であった。「知らなかったこと、いっぱいあったよ」と、鉄道オタクのディレクターも、普段は見ることのない裏側の発見に満足した様子。彼の自慢話のネタがまたふえたようだ。

『駅と空港の設備機器展』
■会期 / 2016年4月20日〜22日
■会場 / 幕張メッセ
■来場者数 / 3万1403人(3日間合計)
■出展者数 / 49社/67小間

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