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一般社団法人日本能率協会
2015/07/24

日本のものづくりの原点がここに! 『文化財保存・復元技術展』が2015年初開催。

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歴史ブームがきているらしい。歴女と呼ばれるマニアも周囲に何人かいる。が、当のルポライター本人は、そっち方面の知識や関心がほとんどない。「文化財メンテナンスの展示会」と聞いても、ちっとも内容がイメージできないのだが。「見たこともないようなものが見られたり。絶対、おもしろいから!」と、しきりに背中を押すJMAスタッフ。よおしそれなら、清水の舞台から飛び降りる覚悟で!と取材に挑んだ。ところが、これが本当におもしろかった。この展示会でしか出会えない技術や情報に、驚かされることばかりだったのである。伝統と科学が交差する、現代日本がたどり着いた技術の粋を紹介しよう。

悠久の時を経て。継承される職人の技と心。

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行き交う来場者が「おおっ!」と足を止めるのは、瓦メーカーのブース。縦1メートルはありそうな巨大な鬼瓦を職人が黙々と作りあげていた。まるで指でなぞるように木べらで繊細なラインが描かれていく。若い職人さんではあったが、瓦職人として10年以上修行を積んでいるという。「じゃあもうベテランですね」と言うと「自分なんか小僧ですよ!」と一笑された。聞くと60代の職人でも「自分はまだ未熟」と評する世界というから、まったく恐れいる。一体一体、丹誠込めて作られた瓦は、寺院をはじめ日本全国から依頼されている。

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伝統技法を体験できるブースもあった。京都の仏具店では金箔はりのワークショップを開催。いざチャレンジしてみたのだが、金箔をうまく掴めず大苦戦。はじめて知ったが、押さえる力加減で金箔の輝きが変わるらしい。こうした技術は寺院だけでなく、西洋建築の装飾にも使用されている。

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さらにこちらでは貴重な飾り彫りも見せてもらった。重なる花弁も本物の見まがう小鳥も、なんとすべて一枚の木から掘り出されるのだから驚きだ。残念ながら、同じものを作れる職人は現代にいない。

先人が磨いた技を後世に残す重要性を痛感。そのためには次代の職人育成と、彼らが活躍する場が必要だ。どちらのブースでも今回の展示会を通して、多くの企業が関心を持ってくれたという。ここでの出会いが伝統技法の可能性を広げていくよう期待したい。

いつまでも美しいままで。科学の力で芸術を未来に託す。

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形あるものはいつか壊れる。しかし、それが文化財の場合、みすみす壊れるのを見逃すことはできない。そのための保存技術も多数紹介されていた。たとえば日本の場合、地震からいかに文化財を守るかが重要な課題である。そこで注目されたのが、地震体験カーを使ったデモンストレーションだ。椅子から転げ落ちそうな震度も驚くほど軽減できるこちらの免震システムは、多くの美術館で採用されている。

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物理的な保存のほかに、アーカイブ化の動きも顕著だ。老舗メーカーが開発したカメラはなんと2億万画素を誇る!高スペック機械大好き人間の私は「欲しいなあ」と思わずポツリ。「販売価格600万円くらいです。お手頃なので買ってください」と茶目っ気たっぷりに返されてしまった。当然ながらプロユースである。

いまやこうした科学技術は、文化財研究の分野で欠かせない。そのため、本展には美術館や寺院などの専門施設関係者だけでなく、教育機関の職員も多く来場した。出展者と来場者のマッチングは、イベントの専門性と有効性が高い証である

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また、会場内で開催された特別セミナーも、来場者から好評だった。最新の修繕技術や集客といったテーマごとに文化財事業の明日を考える、貴重な機会がつくりだされていた。

匠の技が現代に生きる。文化財の新風を発見。

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文化財に関連した技術は、新たな商品を生み出す力がある。そう気づかせてくれる展示物とも数多く出会えた。そのひとつが日本全国の和紙を扱うメーカーのブース。繊維が複雑にからむ和紙は、洋紙より強度がある。この性質を利用した不織布は、マスクやガーゼといった医療用品などでも頻繁に使用されている。

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彫金を扱う企業では、“電鋳”という技術を知ることができた。金属を電気分解させることで、どんな複雑な形状も作り上げるというのだ。これにより、これまで手彫りでしか作れなかった彫金作品をオリジナルそっくりに複製することができる。この技術は兜飾りなどの工芸品はもちろん、ホテルの内装や高級化粧品のパッケージなどで採用された実績を誇っている。

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ラストに紹介するのはタイル専門店。こちらは昔ながら風合いを残した復元タイルが有名。東京駅修復で外壁タイルを作った企業と言えば、知っている方も多いのではないだろうか。単に色を合わせるだけでなく、年季の入り具合などを考慮した複数パターンのタイルは、職人の試行錯誤の賜物。塗りのパターン完成まで2、3年かかることも少なくないという。

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つまり、文化財は特別な存在ではない。その保存・復元のための技法は我々の身近な場所でも活かされているのだ。そして、それは日本らしいものづくりの実現に大いに役立っている。継承のなかにこそ、イノベーションの種が潜んでいた。あらためてそう気づかせてくれた本展はJMA職員の自信どおり、実におもしろく、未来思考の展示会だったのである。

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