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一般社団法人日本能率協会
2018/05/10

強さの秘密を熊谷市長に独占取材! 展示会の新たな時代を切り開くグローバルMICE強化都市『千葉市』

『幕張メッセ』を擁してMICEを先駆け

 1989年に開業し、まもなく30周年を迎える『幕張メッセ』。千葉県千葉市の美浜区にある国内屈指の規模を誇る展示場であり、近年は国際会議や国際展示会などの開催が増え、存在感が増している。一般社団法人日本能率協会(JMA)では、東京で開催されていた『国際食品・飲料展』(現FOODEX Japan)を開業の翌年から『幕張メッセ』で開催しており、開業当初から会場を利用している。この『幕張メッセ』が、千葉県や千葉市にとってどのような存在なのか、そして、今後はどのように活用していくのか、千葉市長を務める熊谷俊人氏に、お話を伺ってみた。

熊谷市長

 まず、熊谷市長から語られたのは、千葉県の地理的前提だ。
「よく1都3県と言われますが、もともとは1都2県だったと思うんです。千葉県は地形的に半島で、どん詰まりの位置に当たります。ですから、地政学的に、東京、神奈川、埼玉の結び付きには敵いません。交通網もそうですし、経済資源の流れも、1都2県の結びつきは強いです。千葉県は東京に隣接していても、地理的条件は非常に不利な立場でした」

 確かに、中京エリアに隣接する神奈川県や北関東に加えて上越方面にもつながる埼玉県に比べると、千葉県の地理的な不利は否めない。そんな環境でも“1都3県”と数えられる理由はどこにあるのだろう。
「千葉県内に成田空港が誕生したことは、地理的に不利な条件を克服する、大きなきっかけになったと思っています。成田市に国際空港ができたことで、千葉県は世界と日本や東京を結ぶ地政学的な地位を手に入れました。成田空港を活用することが、我々が生きていく道のひとつであることは間違いありません」

 そんな状況下で、生まれたのが『幕張メッセ』であり、幕張新都心だ。熊谷市長は、地政学的な課題に対して、施策をこれほどまでに具現化したエリアはないという。
「“MICE”という言葉ができる前から、国際コンベンションセンターをつくるという目的で『幕張メッセ』が整備されていきました。多くの展示会やイベントを開催していただき、ヒト・モノ・カネに加え、さまざまな情報など、経済資源が千葉で交わるための柱になり、千葉県の発展に、大変、重要な役割を果たしました」
 MICEとは“Meeting”、“Incentive tour”、“Convention”(または“Conference”)、“Exhibition”(または“Event”)の頭文字をつなげた造語で、大規模なビジネスイベントなどの総称。具体的には、国際学会や国際展示会、大規模な研修旅行などを指す言葉となる。大規模なビジネスイベントは、その街の産業や消費を大幅に促進する。千葉市では、ほかの都市に先駆けて、MICE誘致を推進することで、大きな成果を収めたのだ。

市と県が一丸となって幕張新都心をヒートアップ

インタビューの様子

 狙いどおりの成果を挙げた『幕張メッセ』だが、その運営は、常に順風満帆だったわけではないようだ。熊谷市長は、当初の成果が仇になった時代もあると語る。
「一方で、高度経済成長の時代を経て、千葉県は順調過ぎるほどの発展を遂げました。それゆえに、千葉県の人々は、神奈川、埼玉に対して地政学的に不利な立場であるという意識が欠けていったようです。『幕張メッセ』を活かすというMICE戦略の元祖でありながら、ほかの自治体の戦略から、少し遅れをとっていた時期があったと私は思います」
 県内の人口が400万、500万、600万と増えていく中で、まるで元から一都三県であったかのような錯覚に陥り、地理的な課題を克服しなくてはいけないという意識が薄れていったのだ。
「少なくとも、私が市長に就任したときには、MICEの誘致や幕張メッセの活用というのは、市政の最重要課題ではなかったです。むしろコンベンションビューローへの出向者を減らそうよという意識でした。『幕張メッセ』の開業20周年にも立ち会いましたが、そのあとくらいから意識が変わりはじめたように感じます。国としてもMICEに力を入れていく中で、我々も改めて、原点に立ち戻り、千葉県と千葉市が一緒になって幕張新都心を盛り上げてきたのが、ここ5~10年くらいの取り組みだと思っています」
 1990年代後半からインターネットが普及し、ネット環境が劇的に進化すると、現地を訪れなくても気軽に情報を入手できるようになり、展示会が蔑ろにされる風潮があった。だが、展示会では、会場でしか得られない要素も多い。たとえば“人脈”だ。展示会を取材していると、多くの出展者が、会場での出会いをきっかけに、なじみがない業種のクライアントと商談が進んだり、異業種とのコラボ製品の開発に発展したりといった、成果をあげたという話を聞く。展示会には、まだまだ可能性が残されているのだ。

経済波及効果を見極めてMICEの誘致を展開

インタビュアー

 グローバル化は国際会議や国際展示会を活性化しているが、一方でアジアの各都市はMICEの誘致に積極的に取り組んでいる。たとえば、韓国では2008年から“展示会産業 発展法”を施行して、官民を上げてMICE産業の育成を進めている。MICEの誘致合戦が激化する中で、MICE開催地として幕張新都心の魅力はどこにあるのだろう。引き続き、熊谷市長にお話を伺ってみた。
「幕張新都心は、成田空港と羽田空港の中間に位置しているため、立地条件、環境は非常に良いと思います。MICE参加者がストレスなく移動できる環境だと思います。また、幕張新都心はMICEのためにつくられた都市ですから、ホテルもレストランもショッピングセンターも観光スポットも、すべて徒歩圏内に集約されている点は魅力だろうと思っています」
 会場から近い場所に、世界有数の国際空港が2つあることは、MICEの誘致の強力な武器となる。実際、平成25年度は国際会議が28件だったのに対し、平成28年度は43件開催。平成29年度はさらに延びると予想されている。

展示場

着実に件数を伸ばしている幕張新都心だが、誘致でこだわっているポイントはあるのだろうか。
「まずは、経済波及効果の高いイベントを誘致したいと思っています。展示場の運営というと、どうしても『幕張メッセ』の使用率や入場者数に注目してしまいがちなのですが……もちろん、それも大事なことですが、最も重要なのは経済波及効果だと思っています。市としては、たとえ来場者数が少なくても、参加者の多くが宿泊したり、食事をしたりして、地元の産業や消費に影響力のある展示会やイベントを高く評価しています。そういう意味では、特定の業界向けの展示会は、経済波及効果が高いと判断しています。少しおもしろい取り組みとしては、ムスリムフレンドリーシティをつくるということで、ハラール対応などは、ほかの都市に先駆けて取り組んでいます。ダイバーシティをしっかり意識しながら、ソフト面でも我々は対応していきたいですね」

インタビューの様子

 2020年という大きな節目を目前に控えて、次の段階に向けて、着々と準備を進める幕張新都心。今後の発展は、主催者とっても、来場者にとっても、魅力的な『幕張メッセ』をどうつくっていくか、大きな鍵になる。『幕張メッセ』の活用を含めた幕張新都心の取り組みが気になるところだ。

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