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一般社団法人日本能率協会
2018/03/26

予選を勝ち抜いたファイナリストが『HCJ2018』会場でナチュラルフードの“新レシピ”を披露

2018年2月20日(火)~23日(金)の4日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催されたホテル・レストラン業界の展示会『HCJ2018』。906社・2349ブースが最先端の設備やサービスを展示する一大イベントとあって、連日1万人を優に超える来場者が訪れるなど、今年も大盛況のうちに閉幕した。

会期中には各社の展示だけでなく、100を超えるセミナーも開催。その中でも来場者たちの注目を浴びていたのが、21日(水)に実施された『ナチュラルフード・新レシピ発掘オーディション』だ。

BtoB向けの展示会で料理コンテストを開催する理由とは?

日本政府観光局が発表した2017年の訪日外国人は約2869万人に達し、前年比で19.3%増と急増。訪日外国人の文化や宗教を理解したメニューの重要度が増している。また、国内でも食に対して健康志向が高まっており、ナチュラルフードが見直されている。ホテル・レストラン業界が早急に備えておかなくてはいけないのが、それらの人たちに対応したメニューの開発と充実だ。

「BtoB向けの展示会である『HCJ』ですが、ナチュラルフードに関心をもっている、あるいはこれから事業として導入したい来場者をもっと呼べるようなイベントを……ということで、今回のコンテストを企画しました。また、出展者の方々にも当コンテストの盛り上がりに触れていただくことで、来年以降ナチュラルフード関連の出展がより増えて欲しいという狙いもあります」

そう語るのはイベントの担当者だ。

「今回は審査員として『ナチュラルハウス』や『成城石井』といった、ナチュラルフード関連の食品を多く扱う企業の方や、ベジタリアン雑誌『veggy』(キラジェンヌ刊)の編集者の方にも加わっていただきました。業界の中心にいるような方々に、自分のレシピを直接アピールできます。人脈を広げていただく機会になればと考えています」

実際、ナチュラルフードを扱う業界では、レシピのマンネリ化という問題をどこも抱えており、新たなレシピを常に求めている状況だという。画期的かつ採算性の高いレシピを提示できれば、すぐさま商品化などのビジネスに繋げられる可能性もある。応募者にとっても、バイヤーにとってもメリットがあるコンテストとなったようだ。

ナチュラルフードの定着に欠かせない“美味しさ”の要素

特設会場で開催された『ナチュラルフード・新レシピ発掘オーディション』。“総菜部門”と“スイーツ部門”に応募された多数のレシピの中から部門ごとに4人のファイナリストを選出。そのファイナリストたちが、会場で実際に調理し、それを審査員や来場者が試食して優劣を決める。

与えられる賞は両部門とも“ナチュラルフード・レシピ・グランプリ”と“人気レシピ大賞”の2つ。前者は審査員たちの合議によって、後者は試食した来場者による人気投票で決められる。

審査基準は、味そのものやナチュラル素材の効果的な活かし方が評価されるのはもちろん、出来栄え(フォトジェニック)も問われる。入賞したレシピは商品化の可能性もあるということで単価・コストの面も厳しく精査された。

まずは総菜部門の審査を開始。自ら考案したレシピを調理する4人のファイナリストたちと、その様子を見守る審査員と多数のギャラリー。ギャラリーには、場内を視察している途中でイベントの賑わいに興味を持ち、そのまま飛び入りで試食審査に参加したといった来場者も数多く見受けられた。

総菜部門審査の様子総菜部門審査の様子

調理後の試食、そして審査・投票タイムを経て、総菜部門の受賞レシピが発表。結果は“ナチュラルフード・レシピ・グランプリ”、“人気レシピ大賞”ともに、平林葉子さん考案の『れんこんのはさみ揚げ入り玄米ライスバーガー』が、その栄冠に輝いた。

6種の野菜のミンチが入ったレンコンのはさみ揚げを、デトックス効果抜群の玄米で作ったバンズで挟んだこのメニュー。その美味しさもさることながら、使用している調味料が塩と醤油の2種類だけという、素朴かつ健康面にも配慮された味わいも、審査員たちの高評価につながった。

「私自身、身近にある食材を大事にしたいなという気持ちがあって、当たり前の素材でいかに美味しくするか、いかに驚かせる見た目にできるかということで、今回はチャレンジしてみました」

れんこんのはさみ揚げ入り玄米ライスバーガー

そう話してくれた平林さんは、都内のイタリアンレストランなどで調理経験を積んだあとに、長野県上田地方に移住。お子さんのアトピーをきっかけにマクロビオティックに目覚め、現在は近隣に多く点在する温泉宿と連携し、地元で採れる自然な食材をいたレシピを提供している。

「ナチュラルフードの世界は、それまで修行していた料理の世界とはまったく違うもので、最初は目から鱗の連続でした。私自身、美味しさを追求するような料理も好きですし、レシピを考えるにあたっては“美味しい”と“身体に良い”の中庸というものを、いつもどこかで探ってるんです」

ナチュラルフードを用いたフードと言えば、栄養価は高いが、味わいに関しては、いまひとつ……といったイメージもあるが、ナチュラルフードの普及・定着を考えれば“美味しさ”という要素は決して欠くことができないと、改めて認識させられた。

子を思う母の思いがナチュラルフードを進化させる

さて、残るはスイーツ部門の審査だ。ファイナリストによる調理と実食審査を経て受賞レシピが発表。こちらは、秋幡英理さん考案の『クコの実と豆腐クリームのレイヤースイーツ』が“ナチュラルフード・レシピ・グランプリ”と“人気レシピ大賞”のダブル受賞を果たした。

秋幡さんは、中国の上海生まれで、20年前に来日。今回のレシピで最も気を遣ったのは“水分のコントロール”だったと言う。

「木綿豆腐だとクリームっぽい滑らかさに欠け、絹ごし豆腐だと水っぽくなり過ぎます。そこは試行錯誤の連続でした。また、クコの実も調理前に水に戻す必要があるのですが、ジューシーかつ水っぽくならない戻し方に苦労しました」

スイーツ部門受賞の様子クコの実と豆腐クリームのレイヤースイーツ

普段は薬膳料理の教室を主宰されているという秋幡さん。ちなみに彼女も、お子さんの喘息がきっかけで、ナチュラルフードの世界に目を向けるようになったそうだ。

ナチュラルフードへの関心が薄い日本の料理界をどう変える?

盛況のうちに終了した『ナチュラルフード・新レシピ発掘オーディション』。閉幕後の舞台裏では、審査員とファイナリストたちが歓談するなど、活発な交流が行われていた。

「事前の想像では、もっと地味な料理が出て来るのかと思ったんですが、実際はどれも素材の味をしっかり生かした料理ばかりで、皆さん一生懸命努力をされてるんだなと感じました」と話してくれたのは、今回の審査委員長である軽井沢ホテルロンギングハウス・総料理長の加藤俊之さん。20歳で渡仏し、現地の3ツ星レストランでシェフを勤めたのち、日本国内のさまざまなホテルやレストランで腕を振るってきた。ベジタリアンやヴィーガンの方を理解するため、自らもヴィーガンになったという人物だ。

「普通の料理コンテストだと味が最重要視され、栄養面が顧みられることがほとんどありません。今回は味や見た目はもちろん、素材の使い方や栄養価など従来とまったく違う基準で審査するのが、画期的で面白かったですね。それと、子供を産んでからナチュラルフードに関心を持ったという女性の方が多かったのも印象的でした。料理の世界は今も圧倒的に男性社会ですが、男性はこういうナチュラルフードに目覚めるような、身につまされる動機を持つ機会がないんですよね」

ナチュラルフードを用いた料理軽井沢ホテルロンギングハウス・総料理長の加藤俊之さん

とはいえ、プロの料理人こそ、ナチュラルフードを用いた料理に目を向けなければいけないと加藤さんは力説する。

「日本の料理界はこういうナチュラルフードへの関心や対応が一番遅れていると感じます。今回レシを披露してくれた方々のほうが、ある意味で最先端を行ってるのではないかと。“美味しくてさらに健康面も考えられた料理”を目指して、こういった姿勢でがんばっていらっしゃる方とも協力しあえば、今後より良い料理ができてのではないでしょうか」

日本のナチュラルフード市場のさらなる拡大には消費者の理解も必要だが、作り手側の意識改革も不可欠だ。そのためにも、今回のイベントは非常に有意義だったと言えるだろう。

HCJ三展合同展示会

■会期 / 2018年2月20日~23日

■会場 / 東京ビッグサイト

■来場者数 / 6万1191人(4日間合計)

■出展者数 /906社(2349ブース)

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