ようこそ、展示会!ビジネス・産業振興のために

一般社団法人日本能率協会
2018/02/27

『FOODEX JAPAN』を地産外商に役立てる! 高知県の取り組みに学ぶ展示会活用の秘訣

2018年3月6日(火)から9日(金)まで、アジア最大級の食品・飲料専門展示会『第43回 FOODEX JAPAN(フーデックス・ジャパン)』が千葉・幕張メッセで開催となる。国内外から約3400社以上が出展し、約4000ブースが所狭しと並び、商談や情報収集を目的とした食品・飲料の購買担当者(バイヤー)を中心に約8万5000人の来場者を見込む。そして、この展示会を地産外商や産業振興に上手く役立てている自治体として注目されているのが高知県だ。

 高知県の食品・飲料と言えば、海産物の鰹(カツオ)や、果物の柚子(ゆず)や文旦(ぶんたん)、あるいは芋けんぴやミレービスケット、アイスクリンなどのお菓子が有名だ。また、生姜(しょうが)やニラは全国一の生産量を誇り、お酒も土佐鶴や酔鯨(すいげい)など全国に知られた蔵元を多く抱える。
 高知県の豊富な特産物をどのように都心部など、県外に売り込んでいるのか。展示会をどう活用しているのか。一般財団法人 高知県地産外商公社の外商部長 兼 外商第一課長の田所教夫氏に『FOODEX JAPAN』に出展するうえでの秘訣を聞いた。

田所教夫氏

地産外商の推進を目的とした公社が取りまとめ

 まずは、田所氏が所属する高知県地産外商公社について簡単に説明しておこう。高知県地産外商公社は高知県の産業振興計画の中で、2009年(平成21年)8月3日に設立された。ちょうど生産地域外での消費を促進する“地産外商”がキーワードとして注目されるようになってきた頃で、地産外商の推進という設立目的がそのまま公社の名称に入る形になった。
 翌2010年8月21日には、東京・有楽町に公社が運営するアンテナショップ『まるごと高知』をオープン。県産品の販売だけでなく、高知県の文化や観光情報も含めた“高知の魅力をまるごと発信しよう”という意図で設置された。

アンテナショップ

 アンテナショップを活用するために公社ができたのではなく、公社の活動の一環としてアンテナショップが生まれた点は注目しておきたいポイントだ。公社ではアンテナショップの運営に加え、県産品の販路開拓や営業活動の支援、テストマーケティングなどを通じた県内商品の価値向上の支援、観光情報や食文化等の情報発信などが事業内容となる。『FOODEX JAPAN』などの展示会では高知県として出展するために、事業者の取りまとめも行なっている。

「近年、高知県では輸出貿易の支援にも力を入れています。そのため、国内で実施する海外からの来訪者も多い展示会『FOODEX JAPAN』が活用できる場になると考えました」(田所氏)

 『FOODEX JAPAN』と大きく変わらない趣旨の展示会は、ほかにもある。それこそ小規模ではあるが県が主体となって県内で実施する展示会もある。それらと『FOODEX JAPAN』が大きく異なるのは日本全国や海外からも、多数の来場者が訪れる都心部で開催する展示会であることだ。また、出展すると言っても、ただ漫然と出すだけではダメだと田所氏は指摘する。

「たとえば『タドコロ商店』で出展しても、どこの何屋か分かりませんよね。ブースの前を通れば、何の商品を扱っているのか分かるかもしれませんが、通り掛からなければ分からない。やっぱり、高知だったら高知でまとまったほうが有利です」(田所氏)

 展示会で高知県として打ち出せば、バイヤーは高知県ならこれがあるとイメージして来るようになる。ゆず、しょうが、カツオなど、県外の人が高知県に抱くイメージがあるので話が早いというわけだ。

高知県を打ち出した出展

 ただし、そのためにはバランスも重要になる。もし、ゆずを扱っている事業者ばかりが参加して、カツオを扱う事業者が1つも参加していないとなったら、県外の来場者、特にバイヤーにとっては期待外れになる可能性が増してしまう。このため、公社が中心となり、審査委員会を設けてバランスを取る。

「出展に際し、前もって審査委員会で事業者の出展意欲や販売方針、商品力などの審査を行っており、カテゴリー別にバランスの取れた展示会出展となっております」(田所氏)

FOODEXに毎年出展するメリットは人脈作り

田所氏によると、高知県地産外商公社では展示会のブースそのものは、ほかと比べてそんなに大きく違うことはしていないという。むしろ、する必要はないという考えだ。では、なぜ高知県のブースには人が集まるのか。地産外商に活かせるのか。

「大事なのは継続して出展することです。私自身は最低でも3年くらいは出展していかないと結果につながらないと考えています。『FOODEX JAPAN』には何千社も出展するので、そこに名前の知られていない出展者が1回だけ出てきても、来場者が足を止め、試食し、憶えて帰ってもらうのは難しいです。ブースで大声を出してもなかなか聞いてもらえません」(田所氏)

 毎年出展すると名前が知られ、来場者が足を止めるようになるのだろうか。

「発想の転換が必要です。毎年出展することで人脈を作るんです。当公社は、東京に事務所を構え、常駐スタッフを置き、県のアンテナショップもあります。この条件をフル活用します。たとえば、すでに持っている人脈には展示会のたびに案内状を送っています。受け取る方は、だいたい当公社以外からも案内状をもらっていて、当公社の案内状で入場するとは限りませんが、それで良いんです。高知県のブース“だけ”を目当てに来る人はいなくても、高知県のブース“も”目当てに来る人は年々増えるんですから。人脈が広がれば、事前に何時に行くと伝えてくれるバイヤーさんもできますし、知り合いが通り掛かったときには、声を掛けるだけで足を止めてもらえるようになります」(田所氏)

田所教夫氏

 毎年出展することで、スタッフは高知県内の出展事業者の特徴をしっかりと把握でき、人混みの中で初対面の来場者と話すことにも慣れてくる。新しい商品を紹介するだけでなく、誰かに誰かを紹介することもある。連絡先が分かっているので後日のフォローもしやすい。基本的に来場者は、商売の種となる素材を見つけに来ているので、出展事業者の情報や関係者の人脈が付け焼き刃ではない知識として頭の中に入っていることが強みになっていくのだ。

出展事業者

「バイヤーさんと懇意になると、前回行けなかったから次回は行くといった話もしてくれますし、うちの商品部長を連れてきたから話してやってくれと頼まれることもあります。そうやって、旧知の人脈はリピーターになり、新しい人脈もどんどん増えていくんです」(田所氏)

 食品・飲食業界でビジネスを行う多様なバイヤーが一堂に会する『FOODEX JAPAN』において、高知県ブースが情報の集まる場として機能するようになれば、自然に人が増え、商品は目に付くようになり、好循環が生まれると言えそうだ。

バイヤーからの助言を地元にフィードバック

 田所氏によると、東京の拠点でアンテナを張っていると地元の高知県では入ってこない情報が入ってくるという。情報の量はもちろん、情報の鮮度も高く、生きた情報として県や県内の事業者にフィードバックできるのだ。

「バイヤーとの接点も増えるため、バイヤーから得た助言も地元に返し、商品の改良に役立ててもらっている。商品の競争力が向上すれば、露出機会も増え、販路拡大にも繋がり、新たなバイヤーの目に止まるサイクルが作れるんですよ」(田所氏)

田所教夫氏

 公社の取り組みもあって、高知県内、大きくてもせいぜい四国圏内だった経済圏は、この10年くらいで徐々に全国圏へと広がってきている。こうした高知県の躍進に気づいたほか県や自治体からは、秘訣を教えてくれと頼まれることもあるそうだ。

「公社の立ち上げが大きな転機になっていると分かっても、どういう公社を立ち上げ、そこで何をやればいいか、具体的な部分がわからないようです。当公社も手探りで試行錯誤しながらやってきた面もあるので、一概に言えない部分も多いのですが『まるごと高知』のレポートを毎年出すといったこともしていますので、参考にしていただければと思います」(田所氏)

『FOODEX JAPAN』では高知県のブースを訪れ、名産物だけでなく公社の取り組みもじっくりと観察してみるとよいだろう。

FOODEX JAPAN 2018(第43回 国際食品・飲料展)

■会期 / 2018年3月6日~9日

■会場 / 幕張メッセ 1〜10ホール

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