ようこそ、展示会!ビジネス・産業振興のために

一般社団法人日本能率協会
2015/11/25

“限りある資源と地球を守る” キーテクノロジーが大集合 『INCHEM TOKYO 2015』

話題のドラマから。ある町工場が開発したバルブが、国産ロケットのキーデバイスとして採用され、打ち上げ成功へ導くという物語。テレビでも高視聴率を獲得しているが、そもそもルポライター自身は、原作をむさぼるように読んだ経験がある。それだけに、今回『INCHEM TOKYO 2015』の取材担当になったとき、あの物語に出てくるような熱っぽい技術者と出会えるだろうか、と期待でいっぱい。

さて、当日。今年で記念すべき30回目を迎える『INCHEM TOKYO』は、アジア最大級の化学・環境エンジニアリング展示会。化学・環境産業への貢献と発展の願いが高らかに宣言され、テープカットとともに華やかに開幕した。

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いざ会場に足を踏み入れると、見たこともないような機器や装置がずらりとならび、まるで遊園地かと思うほどのにぎやかさ。どこから取材していいのやらと、ボイスレコーダーを片手に乗り込んだ。

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省スペースと省エネ。環境問題を解決し強みに変える

次世代エネルギープラント開発の核になっているのが、省エネと環境問題の対策だ。例えば撹拌装置。攪拌…小学校の理科でも経験のある混ぜる作業は、エネルギー生産にも、汚水処理にも欠かせない工程だ。驚くほどの種類とカタチの撹拌翼があり、ほんの少し形状が違うだけで、固形なのか液体なのか、混ぜるのか分離させるのか、まったく用途が変わることを初めて知った。

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20年ぶりに出展したという大手重機器メーカーは、最新鋭の省スペース撹拌機器(ブレンド機器)の実機を展示。ブースには、旧世代機と次世代機との大きさの比較解説があり、来場者が立ち止まっては興味深げに説明を読んでいた。「日本は工場用地が狭い。限りあるスペースを有効に使うために、性能は高くよりコンパクトな機器が必要」と担当者は話す。
久しぶりとなった出展理由をたずねると、「機器も技術者も、世代交代の時期。今は、新商品も増えて処理能力も格段に上がっているし。これからの若い世代に、最新のプロセス機器を紹介したくて。今のところ見込んでいた集客の倍以上あってとても満足。来年もぜひ出展したい」と顔をほころばせていた。

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産業廃棄物を新しいエネルギーとして再利用する技術には注目だ。高温排ガス中のさまざまな有価物を分離回収し、製品化するシステムを紹介してくれたのは、セラミックスの総合メーカー。排ガスの中に含まれるシリカや塩素ガスなどには、産業界で価値が高く売却可能な物質が含まれているらしい。「高温のため、これまで分離回収することが難しかった。そこで、セラミックで900℃まで耐えることができるフィルターを開発しました」。と、担当者が紹介してくれたそのフィルターは、まるでインテリアのように美しく、排ガスだの塩素ガスだのといったものとは縁遠いように思えた。

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セラミックに強みをもつこの会社は、反応機等の化学工業用機器や醸造用タンクの素材として欠かせない“グラスライニング”にも力を入れる。グラスライニングとは、ひらたくいえば、金属とガラスを融合させたもの。酸性液に強く耐食性に優れ、表面に滑らかさがある。「身近なものでいえば、ホーローに近い素材です」と担当者。ああ、鍋とかの!あれ! そう思った途端、急に分かった気になるから不思議だ。

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プレート式熱交換器におけるシェアが国内トップをゆく会社では、コンパクトかつ処理能力が世界最大級のプレート式熱交換器を展示していた。より省スペースに設置することで、メンテナンスコストが節約できるなどに期待できるが、重要なのは省エネだけではない。例えば、石油化学プラントの精製工程では、熱交換器が重要な役割を果たす。この熱交換器を船舶などにつめば、洋上のプラントで精製することなく、石油を輸送しながら精製することができるのだ。

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身近な生活を支える、守る。イノベーションとアイデア

プラント関係のプロセス機器や、上・下水処理関係の重機器などがならぶなかで、 太陽光発電パネルや最新の有機ELパネルなど、わたし達の生活に直接関係のあるイノベーションを提供する展示会場もあった。こちらのエリアは、文系のルポライターにも分かりやすくホッと一息。展示されていた有機ELパネルは、鏡台などに組み込まれている従来の照明と異なり、鏡そのものに照明が組み込まれているため影が出来ず、しかもまぶしくない。おお!確かに、皮膚が滑らかに見える。これがあったら毎朝の化粧が楽に出来そうだ。こういった技術は、スマートフォンなどにも応用されるという。

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世界一“漏れないポンプ”で、わたし達の生活の安全・安心を支えてくれているのが、ポンプやその周辺の保護装置、ベアリングの摩耗検知器、警報装置なども取り扱うキャンドモータポンプのトップシェアの会社だ。
キャンドモータポンプとは、一般的なポンプと違い、ポンプとモータが一体化され、密閉される完全無漏洩であるのが特徴だ。薬品や劇物など、取り扱いに細心の注意を払わなければならないものに使用されている。安全性に信頼があり、ファインケミカルや医薬・食品から、インフラを支える新幹線まで幅広く採用されていることに驚いた。東京から3時間かからず大阪に出張できるのも、北陸に日帰りで美味しい蟹を食べに行けるのも、このポンプを製造している人達の技術があるからこそなのだ。感謝せずにいられません。

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国が後押しする、国立研究開発法人NEDO(ネド)の役割

「産官学で連携し協力しあうことで、経済成長の一端をになう革新的技術を創り出したい」と話すのは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDOの担当者。国は「エネルギー政策基本法」に基づき、2020年まで新築公共建築物をZEB(ゼブ)化するという目標がある。そのため、ZEBおよびZEH(ゼッチ)でのゼロエネルギービル・ホーム開発に力をいれ、成果もでているという。
確かに、ビルや家のまるごと省エネに取り組むには、上下水処理・地中熱・建材・太陽光・外壁・空調・照明・HEMS…などなど、あらゆる企業が知恵や技術力を出しあわないと達成できない課題だ。利益を追求するだけでは産まれない、官民のコラボレーションに期待するところは大きい。

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「皆様の税金を投資していますから、その成果を広くお知らせする義務があります。こういった総合展示会では、さまざまな分野の企業が出展され、来場もされる。公募にご協力いただくためにも、ぜひPRしたい」と担当者。また、技術は保有しているがビジネスに結びつかない。そんな中小企業やベンチャー企業への投資も積極的に行っている。「私達と共に、これからの日本のエネルギー対策について考え、知恵を貸していただきたい」。もしかしたら、今までにないアイデア等が『INCHEM TOKYO』で出会い、新しいエネルギー革命を起こすきっかけになるかも知れない。

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世界へ、そして宇宙へ。水イノベーションの夢は無限大

水や蒸気を使わない工場や生産プラントはまずない。
水処理技術で環境問題を解決する会社では、「工場の立地によっても使用する工業用水の種類が変わる。あらゆる水種に対応できる機器を揃えるのは当然。特に、食品を製造する工場では、工業用水・蒸気プラントの安全性をしっかり管理して、間接的にも直接的にも食の安心と安全に貢献しています」と水処理の奥深さを教えてもらった。なるほど。エネルギーを生産するには、水ひとつとっても、細心の調整と整備が必要だということだ。

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この会社では、水処理によるコスト削減や省エネにつながる技術開発も盛んにおこなっている。「世界的にも当社だけの技術でなんです」と紹介してくれたのは、スケールの除去。カルシウムなどがボイラの内側に付着すると、燃費の悪化や、運転障害をおこしトラブルの原因になる。そこで、スケールを付着させないボイラ用水処理の薬品を開発したという。「面白いものを持っていても、使ってもらわなければ意味がない。私達にしかできないことを、もっと世界に向けて発信したいです」と話してくれた。このスケール除去方法はとても好評らしく、取材中も来場者が「コンセプトが分りやすいよね」と、スタッフに話しかけ熱心に聞き入る姿を見た。

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今年、ノーベル賞受賞で話題になったニュートリノ。そのニュートリノに質量があることを突き止めた観測施設『スーパーカミオカンデ』の光電子タンク内部は“超純水”で満たされている。ニュートリノが、水分子中の原子核と衝突した時に発せられる微弱な光をキャッチするため、水中に汚れや不純物があると、それらがノイズとなり観測の妨げになる。そんな、不純物をかぎりなく取り除き、純水から“超純水”を分けられる日本一、いや、もしかしたら宇宙一の技術力の会社のブースでは、たくさんの排水処理技術が紹介されていた。従来装置にくらべ約4倍の速度での処理を可能とする最新機械などは注目の的だ。

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こういった超純水を分ける技術は半導体製造の過程でも必要とされ、業界関係なくブースを訪れる人が後をたたなかった。ちなみに超純水とは、どんな色なのだろう。『スーパーカミオカンデ』は一般人でも見学ができる。が、光電子タンク内部は当然、ヒトの立ち入りが許されないはず。忙しそうにしている担当者には、ちょっと聞けそうにもなかった。残念。

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2020年にむけて。新しいエネルギーの可能性と、展示会の未来

国は2020年までに水素供給システムのインフラ整備を、また、2040年には二酸化炭素が発生しない水素製造技術の確立をめざしている。身近なところでは、家庭用燃料電池エネファームや燃料電池車(FCV)の市販も進み、水素エネルギーはここ数年、注目され続けている。そんなトレンドをうけて、今年は水素エネルギーの専用展示会ゾーンが設けられた。現在は化石燃料から水素を取り出しているが、電気分解の研究が進めばもっと活用方法が広がるとされる。課題も多いが、まだまだ発展の見込める分野だ。
「やはり注目度は抜群で、水素関連の会社のセミナーは大盛況でした。2020年にむけて、どれだけの技術革新が起こるのか期待したいです。我々も力になれれば嬉しいですね」とJMAの担当者。

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「化学にたずさわっている方には、本当に楽しい展示会だと思います。技術の細かい部分までしっかりと話せるので、皆さん熱心に見聞きしてらっしゃいますね。あと、よく伺うのが、論文で読むのと実際に見るのとでは全然違うってことです。デモ機を眼の前にすると新しいアイデアが閃いたりするそうです」
まさにそのとおり!当日は天気が悪にもかかわらず、展示会の評判は上々。ブースを回っていると「予想以上のお客様が来ている。良い引き合いがありました」という声があちこちから聞こえてきた。

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閉場ぎりぎりまでねばった甲斐あって、帰り際の来場者の何人かからも話を聞くことができた。その中に1人、水関係の会社に勤めている入社2年目の若手社員は「自社の濾過システムと他社さんの製品を融合して、新しいシステムを作れないか見て回りました」とのこと。「いい出会いはありましたか?」と質問すると、はにかみながら「ええ」と返された。
また、ある会社の担当者は「就職を見据えて、理系の学生さんも来場されます。こういう展示会で実機やデモ機を見てエントリーしてくれることもありますね」と語ってくれたのを思い出す。

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頑張れ、日本のエネルギーと未来をしょってたつ若者達!そこには夢いっぱいの未来がある。その機器が、その装置が、そのデバイスが、世の中を変える可能性を持っている。
最後に、やっぱり言いたい。「そこに夢はあるか」

『INCHEM TOKYO 2015』
■会期/2015年11月25日〜27日
■会場/東京ビッグサイト
■来場者数/2万2,802人(3日間計)
■出展者数/413

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