ようこそ、展示会!ビジネス・産業振興のために

一般社団法人日本能率協会
2017/12/25

省人化が求められる化学プラント産業 『INCHEM TOKYO 2017』の注目キーワードはIoT活用

化学プロセス産業を支えているIoT技術たち

化学プロセス産業用プラントに関連した技術・機器の展示会『INCHEM TOKYO 2017』(以下、INCHEM TOKYO)が、東京ビッグサイト(東京都)で、11月20日〜11月22日の3日間に渡り開催された。同展示会では『プラントショー』を中心として、4つの展示会を開催。加えて、2つの集中展示コーナーを設けており、348社が参加するアジア最大級のイベントとなっている。中でも、重要なキーワードとなっているのが“IoT”(Internet of Things)だ。INCHEM TOKYOでも『プロセス産業とIoT』として、独立した1つの展示会として展開しており、その注目度の高さを物語っている。ここでは、INCHEM TOKYOに出展されていたIoT関連の展示をまとめていこう。

さて、展示の紹介する前に、まずはIoTをおさらいをしておこう。IoTとは、ネットワークを経由して、さまざまな機器と連携して動作する仕組みのこと。身近な例としては、スマートフォンやタブレットの操作に対応したエアコンや照明、スマートフォンで施錠・開錠できる鍵、自動で掃除をするロボット掃除機などが挙げられる。すでに社会に溶け込み、特にIoTという言葉を意識することなく使っている人も多いかもしれない。そして、このIoT技術が、化学プロセス産業の分野で浸透し、業務の円滑化、効率化などを担いつつあるというわけだ。それでは、IoTが化学プロセス産業で、どのように活用されているのか、各社の展示ブースを見ながらチェックしていこう。

スタッフの状況を把握して作業を円滑に実行

INCHEM TOKYOで、IoTの活用として注目されていたのが、作業員の安全性を確保するシステムだ。専用のシステムと、作業員のスマートフォンやスマートウォッチを紐付けることにより、作業員の身の安全を遠隔地で確認できるようにするという仕組みで、状況把握には、端末に内蔵されている加速度センサーや高度センサーなどのデータを利用する。

たとえば、センサーが急激な加速度を検知すれば、作業員が転倒している可能性が高いと判断され、マスターシステムに“転倒”というアラートが表示するといった仕組みだ。
また、GPSとも連動しているため、導入すれば、作業員がいまどのセクションにいのかも常時確認。遠隔地から作業員の状況を判断できる。

作業員の安全性を確保するシステムGPS連動

データを蓄積していけるのはIoTの強み。長期的に見て、危険な環境や担当をあぶり出すこともできる。なお、利用するスマートフォンやスマートウォッチは、いくつかの条件があるものの市販品で対応も可能。

一方で、アイトラッキング技術を使い、業務の効率化を実現するシステムも展示されていた。専用のウェアラブルグラスを装着することにより、装着者の視線をトラッキングできるというソリューションで、管理室などからネットワーク経由で作業員に異常がないかをチェックできる。作業員が見落とした設備の異常発見といったことも可能なほか、新人の育成にも活用が期待されている。

tobiiブースウェアラブルグラス

アイトラッキング技術は、視線の動きを検知できるため、状況の把握に加えて、作業内容や手順などの分析なども可能。

備品・素材の管理をタグ付けして無駄な作業をカット

前述のシステムは作業員の管理をサポートする仕組みだったが、部品や素材の管理にIoTを活用したシステムも展示されていた。

大規模な工場や倉庫内では、多くの場合“ピッキング”という作業が発生する。ピッキングとは、指示された部品や素材を棚や資材置き場、箱などの保管場所からピックアップする作業のこと。あらかじめ保管場所と部品・素材の位置をリスト化し、作業員はそのリストに従って必要なもの探し出し、所定の場所まで持っていく。在庫数入力や保管場所の入力など、リストの作成は、いまだ手作業の場合も多く、棚卸しやレイアウト変更などがあると、膨大な時間と労力が必要になる。

それに対して、位置検知ソリューションを利用し、部品や素材に張り付けたタグをハンディリーダーで読み取ることで、それらを管理できるのが“UHF RFID”というシステムだ。部品・素材に固有番号を割り当てておき、ハンディリーダーかざすと、その部品・素材がどこに保管し、在庫はいくつあるのか、すぐわかる仕組みになっている。しかも、取得したデータはクラウド上に備蓄し、データベース化することも可能だ。部品や素材を厳密に管理できるうえ、作業も効率的に進められるだけに、化学プラントでの活用も期待される。

muRataブース金属面に取り付け可能なRFIDタグ

BLE Beaconタグ

金属に貼り付けると、一般的には電波に干渉するが、このメーカーのUHF RFIDの場合、感度が向上する。また、85℃までの環境で故障せず、IP6X等級の防水性能を持つなど、プラント内の厳しい環境でも問題なく動作するという。

オフィスにいながらプラントの稼働状況を管理

ここまでは、工場やプラントといった、比較的大規模な施設で利用される機会の多いIoT技術を紹介したが、つぎはオフィス向けとしても活用できるIoT技術を紹介しよう。

無線機の開発を主業務としていた企業の出展ブースでは、IoTゲートウェイ機『QRIoT(キュリオット)』を展示。これは、専用のセンサーモジュールを組み合わせることで、顧客のニーズに合わせて環境情報をネットワーク経由で確認できるというシステムだ。
たとえば、プラント内の湿度を温度を管理する必要があった場合、従来は各プラントに設けられた湿度計と温度計を、担当者が現場の赴いて、直接見て回り、記録していく必要があった。『QRIoT』を導入し、湿度と温度を検知するモジュールを装着して各プラントに設置すれば、オフィスにいながらにして、リアルタイムでのモニタリングが可能となる。“インターネット回線さえあれば、限られた投資でも、複数施設のリアルタイムモニタリングが実現できる”という点は、IoTの強みと言えるだろう。

株式会社九州テンブースIoTゲートウェイ機 キュリオット

リアルタイムモニタリング

QRIotは、ユーザーのニーズに合わせてモジュールを接続し、計測内容を変えることも可能。複数の作業場の状況を、低コストで一括でモニタリングできるという強みがある。

IoTの力を活用して省人化しつつも生産性を向上

さて、人やモノの管理、遠隔地のモニタリングなど、IoTを活用した展示ブースを紹介してきた。IoTを導入したシステムに、いずれもに共通するのは、プラントの運営を大幅に効率化できるという点だ。いま、化学プロセス産業で、IoTが求められている背景には、効率化を進めざると得ない状況が見え隠れする。日本能率協会の瀧浪氏は「将来的にプラントで働く人は、ますます減ってくると思います。従来までの作業工程を見直して、省人化した状況でも円滑に運営を進める技術が必要になってきていますね。IoTを利用したシステムが、実用段階の技術として、化学プロセス産業に導入されはじめているではないでしょうか」とIoTが求められている背景を語る。

日本能率協会 瀧浪氏

IoT分野の発展は、今年のINCHEM TOKYOにおいて重要なテーマのひとつになっていたが、来年以降も、進歩を遂げた内容の出展が期待される。

INCHEM TOKYO 2017

■会期 / 2017年11月20日〜22日

■会場 / 東京ビッグサイト

■来場者数 / 1万9908人(3日間合計)

■出展者数 / 348社(950ブース)

ページの先頭へ