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一般社団法人日本能率協会
2017/12/25

IoT技術を取り入れて新たな時代を迎える『INCHEM TOKYO 2017』が開催 化学プロセス産業を支える“メンテナンス”にも注目

2017年のプラントショーを象徴するIoT技術

11月20日〜11月22日の3日間、東京ビッグサイト(東京都)の東1〜3ホールで、アジア最大級となる化学プロセス産業用プラントに関連した技術・機器の展示会『INCHEM TOKYO 2017』(以下、INCHEM TOKYO)が開催された。今回のINCHEM TOKYOでは『プラントショー』を中心として『先端材料展イノベーション・プロダクツ』『プロセス産業とIoT』『水イノベーション』の4つの展示会を同時に開催。加えて、集中展示として『工場の省エネ・環境対策コーナー』『プラント補修・保全・長寿命化コーナー』も展開。大規模なプラントで導入されることを想定した技術や製品など、会場には普段なかなか目にする機会のない各社のソリューションが披露された。

中でも来場者の注目を集めていたのは、IoTやVR、AIといった次世代技術だ。一見、化学プロセスとは関係なさそうな、IoT(Internet of Things)などの技術が、INCHEM TOKYOのテーマとして組み込まれているのも“運転監視”から“予知保全”など、プラントの運転を安全に、また円滑に事故なく進めるための技術が重要視されているからだ。
大規模なプラントなど、プロセス産業における生産システムでは、生産システム上で不具合が起きた際、“一旦運転を止める”ということができない。なぜなら、一般的な組み立て産業のように、部品を組み込んで製品を1個づつ生産するものではなく、密閉された容器内で物質と物質を混ぜる・反応させ別の物質を一括・大量生産しているため、一旦停止してしまうと莫大な損失につながるのだ。プラントが停止することを避け、できるだけ円滑に稼働させるため、IoT技術はプラントにとって大事な要素。“安全”“、“事故なく“、”止まらない”が極めて重要なのである。
IoTの技術を利用すれば、異常や異変をいち早く察知して、プラントが異常運転や緊急停止する前に保全・補修等のメンテナンスをするができる。大型プラントの新設が少なくなる中、既存施設へのIoT技術の導入とそれを利用したメンテナンスの重要度が高まっているのだ。

エネルギー弁別型放射線ラインセンサー展示ブース

エネルギー弁別型放射線ラインセンサーを展示するブース。レントゲンのようにパイプの腐食を撮影でき、分解なしでのメンテナンスに役立つと言う

オンオフバルブマネージャーオンオフバルブマネージャー

バルブの抵抗などをあらかじめ入力しておき、数値との差が検知されると、異常が発生する前兆としてシステムに伝える仕組みを採用したオンオフバルブマネージャーもみられた。

また、プラントの長寿命化という点でもメンテナンスは注目されている。従来のINCHEM TOKYOでは、新設プラント向け、設備更新向けの機器やパーツに関する展示がメインだった。しかし、竣工から長い年月が経過し、老朽化の進むプラントも増えている。とはいえ、莫大な予算をかけて新設するプラントは、企業の資本をもってしても、立て替えたり、増設したりといったことが容易でない。プラントは“安全”“、“事故なく“、”止まらない”ことが求められるのだ。

バット融着機ポリエチレン製のパイプ

ポリエチレンパイプを接合するための『バット融着機』。ポリエチレン製のパイプは高温には弱いが、腐食の心配が少なく、長期間の使用にも耐えるという。

“止まらない”からこそ求められる省エネ化

IoTを取り入れた最新のメンテナンス技術が注目されているのは事実だが、一方でプラントの“省エネ化”を求めて、INCHEM TOKYOに訪れるプラントオーナーや企業の経営陣も多い。

日本の産業で、省エネがトレンドとして叫ばれるようになったタイミングは何度かあるが、直近では2000年代初頭の原油高の時期、そして2011年の東日本大震災の時期だ。この時期、世間ではブームのような文脈で語られた省エネだが、大規模なプラントにとっては、常に意識される問題である。前述のように、プラントは“止まらない”が基本だ。停止することなく稼働するプラントは、わずかの無駄でも膨大なエネルギーロスにつながる。プラントを運営する企業ならば、必ず追求していくべき問題なのだ。

日本の省エネ技術は、世界でも最も進んだ技術力を備えている。やり尽くしていると言っても過言ではないが、それでもアンケートの来場目的の欄には“省エネに関する技術が見たい”と書く来場者は少なくない。いかに省エネ技術が進んでいても、さらなる省エネ化が求められるのは、INCHEM TOKYOの特徴とも言えるだろう。

たとえば、撹拌装置の大手メーカーのブースで紹介されていた低動力型撹拌装置『RB Mixing System』は、タンク底に撹拌用とは別の羽を設置し、より少ない動力で撹拌効率を高めるというもの。主に消化槽に利用される技術だ。

SATAKEブース低動力型撹拌装置 RB Mixing System

展示物

工業用撹拌器を多数手がけている大手メーカーのブース。低動力型撹拌装置『RB Mixing System』は省エネ、高効率が特徴だという。

なお、省エネの分野で、いま最も注目されているのは、排熱利用分野の“低温排熱”に関する部分だという。
プラントを運営する中で、自然と生まれる熱を利用して、お湯を沸かし、お湯を沸かすコストを削減すると言った熱利用は一般的だが、そこまでの熱エネルギーを持たないケースも多い。温度が低く、現状では排熱利用が難しいが、そのまま捨ててしまうには惜しい。これまで捨てていた、低温排熱をどうやってエネルギーに変換するかという点に注目が集まっているのだ。今後の発展が期待される技術だろう。やり尽くされているように見える省エネ化だが、まだまだイノベーションに満ちている。INCHEM TOKYOを訪れる来場者には、今後も省エネ化は見逃せない要素なのだ。

AIやVRなどを取り入れたイノベーションに期待

INCHEM TOKYOは、ビジネス向け、しかも化学プロセス産業ということもあり、普段の生活からは、かけ離れているように感じる。しかし、ごく限られた業界向けの技術というわけではなく、じつは我々の生活にも、そこかしこに恩恵が見られるという。
「見ていると、おもしろい技術ばかりですよ。“見えないところで活躍しているんだろうな”って想像できる。じつは、化学プロセス産業(化学産業)は、自動車産業に次ぐ産業なんですよね。それこそ撹拌器で言えば、製薬会社・化粧品会社や飲料・食品メーカーなどあらゆる産業で、活躍しています。私たちの生活を影で支えている技術も少なくありません」
と日本能率協会の担当者は語る。

日本能率協会の担当者

一方でINCHEM TOKYOもかわりつつあると言う。
「IoTに加えて、AI、VRなどの技術の活用も活発になっていますが、まだ“走り”という印象ではありますね。これまで、人間が判断していたことをAIに判断させたらどうなるのか、VRを用いるとどんなメリットがあるのかなど、試しながら模索されている状態だと思います。それらの技術を運転管理やメンテナンスに活用したい企業は多いでしょう。具体的な活用提案をする企業には、ビジネスチャンスとなるかもしれませんね」

VR体験の様子東レエンジニアリング株式会社ブース

VR技術を用いて、擬似的に工場内での作業を学習したり、シミュレーションしたりできるシステムも展示されていた。

施設のメンテナンスが重要度を増し、今後はIoTをはじめとした、デジタル技術との融合が加速することは間違いない。自動車産業に次ぐ規模であるだけに、そられの技術でも、従来にないイノベーションが生まれる可能性は大きい。次回は、どんな技術や設備が出展されるのか、楽しみな展示会だ。

INCHEM TOKYO 2017

■会期 / 2017年11月20日〜22日

■会場 / 東京ビッグサイト

■来場者数 / 1万9908人(3日間合計)

■出展者数 / 348社(950ブース)

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