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一般社団法人日本能率協会
2017/08/25

守る努力と、壊れた後にも残す努力。二つとないものを守るためへのアプローチ 『文化財保存・復元技術展』『ミュージアム設備機器展』

保存・修復・復元。いろいろな向き合い方を展開した展示会

2017年7月19日~21日の3日間、東京ビッグサイトにて『第3回 文化財保存・復元技術展』『第1回 ミュージアム設備機器展』が開催された。

免震モジュールTGS型 五重塔展示品

「ものはいつか壊れる」とは言うが、文化財の場合は「だからしかたがないよね」では済ませられない。何百年、何千年と形を保っていたものを、私たちの代でなくしてしまうわけにはいかないのだ。

とはいえ日本は地震が多い上に住宅は木造。火山が多く台風が上陸するなど、あらゆる災害が降りかかる地域なのだ。1つでも多くの文化財を守るために、対策を打っていかなければならない。

文化財の保存とミュージアム設備には密接な関係があり、大きく分けて3つの考え方があるようだ。まず文化財の保存だ。今ある形をどれだけ劣化させずに取っておけるか。そして保存するために修復が必要な場合もある。そして、すでに消失してしまったものを復元すること。この「保存」「修復」「復元」の3つに出展者の傾向が分かれるようだ。

地震大国日本を体感し、まずは耐震の大事さを実感する

免震体験車 免震システム

会場内で最も大きなスペースを取っていたのが、耐震設備を紹介するブースだ。免震体験車で、東北や熊本の地震を再現していた。希望者は車に乗って体験することができるのだが、まずは免震システムのない状態で震度7までの揺れが起こる。椅子に座っていても倒れそうになるくらい激しく揺さぶられ、テーブルについたバーを必死で握っていなければ振り飛ばされてしまいそうだ。その後、免震システムを作動させると、揺れはあるものの、身体が左右に振られる感覚はかなり軽減された。貴重な文化財を扱う場所には必須の設備だということが実感できる。

免震システムは、建物そのものに設置することもできるが、一方で展示品ごとに備え付けることも可能だ。この場合は費用も安価に済むといい、すでに国立博物館などで導入されている。

こうした免震システムは、文化財を「守る」ためのものだ。では壊れてしまったものはどうするか。VRで再現しよう、というサービスがある。現在は跡地になっている城址などで、実際にVRシステムを使って城の中を歩いているような体験ができたり、VRを使ったシューティングゲームが楽しめる。これらは自治体の歴史資料館などに導入されている。

HANDY SCAN展示 体験する男性

また資料館といえばジオラマがつきものだ。ショーケースに入ったミニチュア版の建築物や地形を俯瞰できる。ボタンを押すと該当部分に明かりが付き、説明が流れるといった設備が一般的だが、これも最新技術を使うと、ホログラムによって映像が浮かび上がり、その映像に触れると機器が反応し、解説が読めるというもの。

こうした最新機器の設置は、歴史や文化遺産に興味の薄い子どもや生徒たちの気を引くのに役立ちそうだ。

昔ながらの技術を失わせないための営業努力としての利用

左官道具 左官業展示

一方で先日、左官業が年々減少していることがニュースになった。そんな中で、各種文化財の修復を一手に担っている会社がある。社長は「うちは実績を見れば誰もが安心して依頼してくださいます。これだけの文化財を手がけている左官屋はほかにないでしょう」という。しかし毎年展示会への出展は欠かさない。「展示会は毎年出展してこそ意義があります。1年休むと、取り戻すのに4、5年かかりますから。存在をしっかり意識していただくのに展示会はうってつけですね。展示の仕方を工夫したり、ロゴの入ったはっぴを用意して名前を覚えていただくなど、より高い宣伝効果を狙っています」。

実績に甘えず、営業意識を高く持つことが技術を継続させる秘訣なのかもしれない。

昔ながらの技術を失わせないための営業努力としての利用

展示会担当者

また今回は特別講演会の登壇者が国立博物館や省庁といった豪華な顔ぶれだったことも魅力的だ。本展示会担当者は、
「みなさんとても好意的で、お声がけをした方々みなさんご快諾をいただけました。正直、ここまで豪華なラインナップになると思っていなかったので、注目度の高さを実感しました。ですが次もこのクオリティで開催をしないといけないがプレッシャーです(笑)。しかしこの展示会のテーマは文化財やミュージアムということで、とてもニッチです。その周辺で仕事をされている方々に、できるだけコアな出会いがあるようにという思いで準備しました。関係者の方々は、横のつながりが深いようで、講演会で『あなたも来ていたの?』などと顔を合わせていた方たちを多く見かけました。まだまだ歴史の浅い展示会ですが、毎年の待ち合わせ場所になってくれればいいなと思っています」

特別講演会の様子 展示

担当者によると、文化財保存にこれまでIT関連の技術展示はそれほどなかったという。しかし今年は、VRやホログラムのほか、紫外線による劣化を防ぐLEDライトや3Dスキャンによる文化財のデータ化など、デジタルの活用が目立った。

また最新技術を用いた保存や復元設備がある一方、古来の技法そのままに修復を行う技術もあり、新旧取り混ぜたバラエティ豊かなものとなった。より多くの人に歴史や文化に興味を持ってもらうことが、保存への第一歩だ。そのきっかけに最新技術を利用するのも手だろう。目に見える部分だけではなく、免震や劣化防止のライトなど裏方で活躍する技術もある。これらをうまく取り入れることで、保存や展示、修復がより進化していくに違いない。文化財の焼失や破損といった悲しい事件が起こることないよう、あらゆる手段を講じていって欲しい。

文化財の保存や修復の多くは営利目的ではない。文化財保存にまだ取り組んでいない寺院にも、その必要性を考えるきっかけとして、活用してもらいたい。

第3回 文化財保存・復元技術展』『第1回 ミュージアム設備機器展

■会期 / 2017年7月19日~21日

■会場 / 東京ビッグサイト

■来場者数 / 3万8463人(3日間合計、他の同時開催展の入場者数を含む)

■出展者数 /25社/35ブース

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