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一般社団法人日本能率協会
2018/12/19

鳥獣被害に対する攻めの動きが見えた
『鳥獣対策・ジビエ利活用展』

2018年11月20日(火)~22日(木)、東京ビッグサイトにて開催された「アグロ・イノベーション2018」。こちらと併催され、一際異彩を放っていたのが「鳥獣対策・ジビエ利活用展」だ。農業生産者向けの展示会でなぜ狩猟体験やジビエの利活用の展示があるのか? 展示会を主催する一般社団法人日本能率協会(以下JMA)の中野氏にお話をうかがった。

鳥獣対策は日本の農業にとって喫緊の課題

ホテル・レストラン、化学・プロセス産業、電機・機械、食品・飲料など様々な産業向けの展示会の数々を担当してきた中野氏。さまざまなジャンルを担当してきた中野氏に今回の『鳥獣対策・ジビエ利活用展』の必要性や背景などを聞いた。

「実は、野生鳥獣による農作物被害額は近年200億円前後で推移しており、営農意欲の減退や、耕作放棄の要因にもなっています。その一方で、猟友会のメンバーは年々高齢化し、60歳で若手と言われる世界なのです」

狩猟というと、猟友会に入らなければならないとか、猟銃の免許のハードルが高いなど、どうしても気軽に始められないイメージがある。実際、どのように免許を取得するかなどの情報も少なく、限られているのが現状だ。それでも少しずつではあるが、若年層の免許取得も増えているという。

「そんな狩猟の現状ですが、若い人の間にも狩猟免許を取得する流れが少しずつ増えてきています。都市部から地方への移住やアウトドアレジャーの流行によって、狩猟を職業、収入を得る手段の一つとして認知されはじめており、釣りなどと同じ感覚で捕った獲物を味わうという人々も増えてきています。」

そんな中野氏の言葉を裏付けるように、狩猟の世界にもIoTやガジェットの波が訪れている。NTTドコモは、省電力のカメラとLPWA(Low Power Wide Area;低消費電力で長距離通信が可能になる無線通信)対応の伝送装置によって仕掛けた罠の状態がスマートフォンやタブレットで確認出来るソリューションが展示していた。

こちらはLPWA対応子機にカメラが搭載され、罠が作動した際の画像とともにメールで知らせるというものだ。メールは最大5つまで登録でき、仕掛けた本人だけでなく、処理施設や自治体担当者など関係者に情報を送ることが可能。画像があることで、誤作動なのか、獲物がかかっているのか、誤って子供や保護動物など捕獲対象以外がかかってしまったのかが事前にわかるので、現場に行く前に必要な対策をして向かうことができるとしている。

 リアルを追求した迫力の狩猟体験コーナー

罠猟以外にも、銃砲を使用した猟についても展示があった。

展示会の中心には狩猟体験コーナーが設けられ、光線銃でプロジェクター投影された獲物を撃つ狩猟シミュレーターを使用した狩猟体験が人気を集めていた。単純な射的ではなく、被弾箇所によって倒せるのかそうでないかの判定もあり、命中しても動きを止められない箇所であれば逃げて行ってしまうなどリアリティのある内容も興味深いものだった。

またコーナー内のブースでは、ハンター携行用のGPS装置が紹介されていた。狩猟の現場である山で、獲物を追うために登山道から外れた道をゆくためにGPS装置は不可欠。狩猟モデルの特徴としては一緒に入山した仲間の位置をGPS上に表示でき機能があるという。じつは本展示会の開催中にも北海道でハンターが誤射をした悲報が報じられたが、このような装置を活用することによって、不幸な事故を減らせるとしている。

その他にも、獲物の体温や、滞在していた場所に残された体温を検知するサーモグラフィーなどテクノロジーによって、ベテランの勘を補うアイテムなどが紹介されていた。

川上から川下まで、捕獲した鳥獣の利活用の課題

狩猟に関しては、仕留められた獲物の消費(処理)にも課題がある。

「狩猟をされる方の大部分は自家消費がほとんどで、一部がご自身や知人が経営する旅館や料理店に回されるにとどまっています。ジビエをはじめ、食肉の流通には、処理や解体の方法や衛生管理などの課題をクリアすることが求められますが、一般のハンターの方にまで情報が行き届いていないのが現状です。鹿など一部の獣種では処理施設、衛生管理基準などの受け入れ態勢も整いつつあり、レストランなどへの流通も増えてきています」(中野氏)

害獣駆除で捕獲された鳥獣は9割以上廃棄されるという。鳥獣被害対策としての捕獲、狩猟を川上とした場合に、食肉や革製品などの利活用を川下として、一つの流れで考えてゆく必要があるという。廃棄処理だけでも膨大なコストとなるので、ジビエを食肉として活用、羽や革などをハンドクラフトなどお土産物として利活用するなどの地域振興に役立てることができれば一石二鳥というわけだ。

大福食品工業では、そんな鹿などジビエの肉を使用したハンバーグやコロッケなどの調理例を紹介、試食も行っていた。試食は大変な人気で、午前中のうちに用意してきた試食用の食材が無くなってしまったほどだという。実は、Becker's 秋葉原店で提供されている「信州ジビエ鹿肉バーガー」のジビエ肉を提供しているのがこちらの大福食品工業だった。

「ジビエというと臭みがあるなど癖のある風味を苦手とする人がいますが、正しく処理することで気になる嫌なニオイなどの部分は軽減することができます。また、食べやすいようにミンチにする、香草を混ぜるなどの工夫も好評です。流通に乗せるためには品質をなるべく均一化する努力も必要ですが、野生の獲物なので季節や地域(食べる餌など)によっても風味は変わりますので、旬を味わうという意識も根付いてくれると嬉しいですね。」(大福食品工業担当者)

「今までもアグロ・イノベーションの展示会内で、鳥獣被害対策ソリューションは紹介されていましたが、害獣が来ないようにする、被害を最小限にするという守りの動きでした。しかし、それだけでは対応できないほどの被害があり、今は獲りにいくという攻めの対策が必要となっています。こういった動きは、農家や猟師など個々にやっていても効果が出にくいので、自治体、官庁ぐるみでやっていく必要性も感じます。ジビエの利活用など、仕組みが整うことで新しいビジネスへの可能性も考えられます。今年は少なかったですが、捕獲した鳥獣の運搬や衛生的な処理など川上である鳥獣駆除から川下である利活用をつなぐ中間工程も、今後は拡充して行きたいと思います。」(中野氏)

鳥獣被害は、直面している農家などにとっては深刻な問題だが、その農作物の消費者である多くの人々にはあまり身近な問題として捉えられていなかった。害獣の駆除には、「かわいそう」というだけでは収まらない喫緊の課題が背景にあることを「鳥獣対策・ジビエ利活用展」では示してくれた。

今年になって国産ジビエ認証の制度も制定され、ようやくジビエの利活用も本格的に始まろうとしている。まさに、鳥獣対策、ジビエ利活用はスタートラインに立ったばかりと言えるだろう。

鳥獣対策・ジビエ利活用展
■会期 / 2018年11月20日~22日

■会場 / 東京ビッグサイト

■総入場者数 /29,269名 (3日間合計/同時開催展示会を含む)

■出展者数 /91社/121ブース(アグロ・イノベーション含む)

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