ようこそ、展示会!ビジネス・産業振興のために

一般社団法人日本能率協会
2017/09/27

展示会というものの役割。日本能率協会 産業振興センター センター長 安江あづさ

一般社団法人日本能率協会(以下、JMA)は 2017年から九州を皮切りに東京、北海道で農業系展示会を開催する。JMAは毎年、各種展示会やセミナー、シンポジウムを開催しており、取り組む産業振興のひとつが、日本における農業だ。具体的に展示会ではどのような企画やコーナーを作って“場”を作り出していくか、理事長の吉田正に続き、JMA 産業振興センター 安江あづさに聞いた。

JMA 産業振興センターのセンター長 安江あづさ

産業振興センターの使命や、目標とは? 産業界の活性化のために何ができるかを提案していく機関。

――産業振興センターとは、どんな組織なのでしょうか。

安江 私たち産業振興センターは、その名の通りあくまでも「産業振興」を行う部門です。産業を発展させるためには、新製品開発を促進し発表できる場、新技術やサービスの情報、業界情報などの促進を促すことが必須です。それらを、広く皆様に発信することを使命としています。「ヒト・モノ・情報の交流と発信を通じて、産業界の活性化に貢献する」という考えのもと、活動しているもので、展示会、シンポジウムやセミナーはその手法という考え方ですね。

――展示会事業はどのような位置づけなのでしょうか?

 インターネットの普及で、何でも検索でき、購入までできてしまう世の中になりました。しかしまだまだネットはインタラクティブ性が低いですから、自分ひとりで物事を考え、探しているだけでは視野が広がりにくい。色んな物事を一度に見られる展示会に行くと、思いもよらない発見や情報が入ってきます。さらにどのブースが人を呼んでいるかも実感できます。それを見ることで、業界の方が何に関心をもっているのか、課題を感じているのか、そして企業の勢いも知ることできます。さらに本物の情報を見極めるにはface to faceが一番だと考えます。展示会は、情報も人も技術もサービスも、実際に自分の目で見て体感し、判断することが可能です。「これは自分には関係がないかな?」思っていた事柄でも、実際にその情報に出会った時、そこに新たな発見があったり、ビジネスのヒントが見つかるようなこともあるようです。これが展示会の醍醐味ですよね。

――日本で展示会事業が始まったのは今から50年ほど前。当時はインターネットなどない時代でしたが、こうした社会の変化、時代によって展示会の在り方に違い変化はありますか?

安江 昔の展示会は、規模を誇るお祭り的要素が強かったと思います。「何十万人来場した」といった数字や、綺麗なコンパニオンたちが華を添えるといった活況な様子が注目されていました。業界を知ってもらう、企業・製品を知ってもらうという目的が強かったように思います。

それが最近は「ビジネスの場」という認識に変わりましたね。名刺を何枚交換したとか、商談にどう繋がった、こんな人と会うことができたなどというように展示会に出展したことによる費用対効果をシビアに求めるようになりました。もはやお祭りではなく、ビジネス色が圧倒的に強いと思います。もちろん展示会の規模を大きくし、より大勢の集客をした方がビジネスチャンスが増えるのですが、それだけではなく「ビジネスに如何に結びつけるイベントとするか」という考え方を意識して構成しています。

――その展示会を農業に活かすにはどうすればよいのでしょうか。

展示展示

安江 九州地域では、農産物の輸出に力を入れて取り組んでおり、県域を越えた連携にもチャレンジしています。また、高付加価値農業を目指した農業の取り組みなども行っています。このような九州の農業のやり方や考え方をもっと全国の農家の方に知ってもらう必要があると思います。

 北海道は日本のなかでは耕地面積が一番大きい。収穫量も多く、「北海道」というブランドは高い人気を誇っています。しかし加工・販売まで一貫してとらえる6次産業化の視点でみると、食品としての付加価値をつけて商品化する力がもう一歩という課題があります。農産物は天候などに左右されるため、安定的に利益をあげていくには、やはり加工・商品化して付加価値をつけて販売していく6次産業化を進めていかなければいけません。

展示会では、各地域の見習うべき農業、農業経営、農業産業を共有するとともに、みなさんの課題にヒントを与える製品・情報・サービスを提供します。どんどん展示会を活用してほしいです。

――第一次産業で十分成り立っていても、6次産業の必要があるのでしょうか?

安江 農業は天候次第という不確定要素に左右されがちです。不作ももちろん困りますが、豊作でも単価が下がってしまいます。自分たちで「加工」ができれば、不作、豊作に関係なく、加工品で出荷調整ができ、安定した経営が可能になります。例えば、不作の時は生産物として出荷し、豊作の時は加工品に回して付加価値をつけた価格設定で商品化し、販売する。こうして収穫量に左右されない調整ができるようになります。農業は「経営」です。一貫して生産物を管理し、商品化、販売する6次産業化は、安定した農業経営には重要だと思います。JMAの展示会では生産から流通までを提案することをコンセプトに実施しています。

――アグリ系展示会でできることは他になにがあるのでしょうか?

安江 農業そのものに従事する人が少なくなっていますし、高齢化も深刻です。展示会では農業に携わりたい人を募集したり、モデルケースを紹介するセミナーも設けています。新規就農者の目線での企画展示や相談コーナーを作るなど、様々な来場者様への情報も充実させています。農業への敷居が少しでも低くなればいいですね。

 また既存の農業経営者も後継者不足や人材不足は課題です。その解決の一環としてIoTなどの新技術導入を積極的に行っていく必要があるでしょう。新しい情報は意識しなければなかなか手に入りませんから、あらゆる情報が一手に集まる展示会は、農業経営を抜本的に変えるいい機会となるはずです。

最新情報を来場者が自分に置き換えられるような企画作り

――10月に東京での展示会が控えていますが、見どころはありますか?

安江 今回は「トマト・イノベーション」ですね。農業の展示会は、JMA以外にもたくさんあります。東京開催の「アグロ・イノベーション」は歴史も長い展示会ですが、最先端の情報が集まる展示会として、皆さんに新しいテーマそ訴求し続ける必要性を感じています。今年は農産物として注目されているトマトを大々的に取り上げました。トマトの品種は8000種あるとも言われています。ケチャップやトマトソースなどの加工品としても汎用性が高く、生食の需要も高い。トマトの生産は、他の農産物にも転用できる技術があるとも聞いています。加工用のトマトは生食としては、美味しくなかったり、酸味が強かったり、固かったりなどもあるそうです。このように、「作る」だけではなく、最終的にどういう製品になるかを見越して作ることが、6次産業化への第一歩です。トマトはその事例として最適だそうです。様々な品種の試食などもあるなど担当者が企画していますので、是非足を運んでほしいです。私もいろいろなトマトを楽しみにしています。

トマトイノベーション スクリーンショット

新しい試みである「トマト・イノベーション」は、農業・農業経営の視点でも注目の作物を取り上げた旬のイベントだ。しかしこのアイデアは、数年前にすでに担当者の頭にあったのだという。

「我々はいろいろな業界のリーダーの方と話をすることが多く、お話を聞く機会もある。さらに様々な製品を見るので自分たちが『新しい』と思う情報は、展示会では早すぎることがある」と安江氏は言う。今、JMAメンバーの頭にあることが具体化するのは4〜5年先のことかもしれない。

彼らの頭の中の課題・情報・企画が、業界で顕在化したころに、満を持して展示会で表現される。

温めに温めたホットなイベントが展示会に登場する企画やテーマなのだ。今年の会場でも3年後、5年後の未来の農業を覗き見することができるかもしれない。

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