一般社団法人日本能率協会
2017/07/24

農業をさらに発展させていくために日本能率協会の試みと挑戦 日本能率協会 理事長 吉田正

一般社団法人日本能率協会(以下、JMA)は2017年から、九州を皮切りに東京、北海道で農業系展示会を開催することになった。JMAは毎年、各種展示会やセミナー、シンポジウムを開催しているが、とりわけ農業に力を入れているようだ。農業支援に対する活動や、そのビジョンについて、理事長の吉田正に聞いた。

農業支援として一体何ができるのか? 企業と農業を結びつけることがカギ。

——まず、JMAでは農業に対するサポート的な活動をされていますが、どんなビジョンがあるのか、お聞かせください。

吉田 JMAの展示会は、1960年に幕を開けました。それまではBtoCだった見本市のビジネスモデルを企業と企業を結び付けるBtoBにシフトする活動を始めたのです。その流れを汲んでいますから、農業でも企業と企業、あるいはそれに近しい結びつけ方を志向している。だから農家の皆さん、あるいは農業をしようとする農業法人の商売をお手伝いすることが、我々の仕事だと思っています。

そもそも日本の国土自体が狭いので、農業は集約型になっています。各農家が持っている土地は恐らく2ヘクタールくらいで、アメリカの100分の1、オーストラリアの1000分の1とも言われています。我々一般消費者は、「安全で安いもの」を求めますが、狭い農地で農家さんが手作業している状況では、海外に比べて安く作物を提供できません。そこをサポートしてコストダウンさせるには、収穫高を増やすことと、彼らの激務を減らすことで、生産性を高めることです。それをお手伝いするのが、展示会やそのほか我々の活動であろうと思います。

——BtoB型の展示会を始めた理由を教えてください。

吉田 1942年に日本能率連合会と日本工業協会が統合して、能率増進を使命にJMAが創立されました。はじめは生産・製造現場の診断や指導から始め、教育や出版へと拡大し、さらに展示会が生まれました。実はその当時はアメリカやヨーロッパでは展示会はすでにビジネスモデルとして認められていたのです。企業と企業を結びつけることで産業界が活性化し、産業の振興に繋がる。これこそJMAがやるべきことなのではないかと、力を入れました。1960年から1970年、日本は高度経済成長期のさなかで、国民の生活は豊かになり、消費が活性化していました。その頃からサービス系の展示会がでてきたのです。そこで、1973年に国際ホテル・レストラン・ショーを初開催したのですが、この辺りからものづくりの展示会だけでなく、サービス系の展示会も増えていきました。農業関連で言えば、最初は施設栽培の技術を紹介する「施設園芸技術展」(1986年第1回開催)でした。それを2008年から「アグロ・イノベーション」に名称を変え、農業における生産技術、加工、流通までと我々が農業領域でカバーできる範囲を少しずつ広げていきました。そして手作業が中心だった農業こそイノベーションが必要ではないかと、アグロ・イノベーションに力を入れているわけです。

――今後、どういうものが必要になってくると思われますか?

吉田 最近はITを使うスマートアグリなど、未来型の農業生産方式の提案が多いように思います。それと植物工場といって、工業的に農産物を作ろうという出展も多いし、あとは六次産業化や食の安全・安心、日本の農業の国際競争力をいかに高めるかというところです。ものだけでなく、ソリューションを提案する企業が増えてきていると感じます。

展示会だけでなく、さらに踏み込んだ施策も……。

――JMAとして展示会のほかに、アグリに対する取り組みはありますか?

吉田 JGAP(農場や農協等の生産者団体が活用する農場管理の基準。農林水産省が導入を推奨する農業生産工程管理手法の1つ)の認証と、女性農業経営者の育成です。女性経営者に焦点を当てた理由は、農業は今や、家族経営で行うものではなくなってきています。家族で農業に従事している場合、朝から晩まで家族の誰かが働いている、つまり、休みが取れず、家族で旅行にも行けない。そのため共同化や組織化された農業法人を作るようになっているのです。これからは農業経営者がどんどん生まれてくると思います。

ハード面が充実し、農業はひたすら重労働でもないし、きめ細かさという面でも女性のほうが向いているかもしれません。3年ほど前から月2回くらいのペースで、すでに農業をやっている女性に集まっていただき、経営者としての目線を養ってもらうためのマーケティング勉強会を開いています。そこでは経営センスを磨くための座学にとどまらず、農業協同組合(以下、農協)に農産物を卸すだけではなく、直接、お客様の手元にどのように届くのか、などの体験学習などを織り交ぜており、すでに数十人と女性農業経営者のみなさんと接していますが、成功されている方は大勢いらっしゃいますよ。

農業女子1農業女子2

――今は積極的に営業をかけて生産能率を上げて向上させていかなければならない時代になっているということでしょうか? しかし個人で売ることは農協との軋轢になることはないのでしょうか?

吉田 農協は重要な組織だと思っています。しかしなかには農協ではなく自分たちで直接レストランに卸すとか、スーパーと直接、取引をした方がいいと考えている人が増えているのも事実です。農協は全て対応してくれて安心ではあるが、農協ではない独立の販路開拓などをやりたい人は独立していく。一般的なフリーランスか会社員か、という差でしょうか。基本的に農産村地域は集落に基づいて形成される地域社会なので、農業は農協の組合員になって成り立っていましたが、最近はそれがだんだん変化しており、農協の組合員にならずに、自分たちでやろうという人たちが増えてきています。

――「農業は魅力的だ」というイメージになったら状況が変わりそうですね。

吉田 若い人と女性が農業をするようになれば絶対に農業は変わります。外国から農業実習生が来日し、一定期間で働いてもらっているけど、こうした仕組みがないと、今の日本の農業は成り立たないとも言われています。農家に嫁ぎたいという女性は少なく、農家の跡取り問題は深刻です。子供が生まれてそこに根付けばいいけれど、それもなかなか難しい問題で、重労働で低賃金ではなく、儲かる農業にしなくてはいけません。通常の企業は自分たちの利益が優先になりますから、農家の皆さんが儲かるように、我々はその支援をしなくてはいけないと思っています。いかに手間暇を削減した農業に変えていくのかという面でも、テクノロジーとイノベーションは必要でしょうね。

――JGAP(Japan Good Agricultural Practice)の認証について教えてください。

吉田 JGAPは、安全な食品がそれぞれの家庭に届けられるように、第三者に認証してもらうものです。日本はオリンピックが控えていますが、オリンピックでは安全・安心でもHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)やGAPを取得した食材が優先されるようになるでしょうから、小会ではJGAPの審査を始めました。その上、ISOの認証機関でもあるので、そこでFSSCなどの食品衛生関連の審査も力を入れています。食は日本国民が健康に生活するベースだから、小会としてもますます注力したい。

――展示会と、女性経営者とJGAP審査との3つをどんなふうに組み合わせようというビジョンはあるのでしょうか?

吉田 それぞれが責任をもって自分たちの事業を活動するのが小会の良いところでもあって、今はそれぞれの分野で伸ばしています。だから、これをうまく連携させるのは、これからの仕事になると思います。協力し合えるところは協力していると思うので、今後うまく組み合わせていきたいと思います。

展示会はマーケティングにもなりますから、出展者様は「自分のお客さんはこういう人しかいない」という固定概念があったかもしれないけれども、全然違うところに違う可能性があることを発見することができます。とにかく展示会にお越しいただければ、無限に可能性があることを理解いただけるでしょう。情報を得ようと思えば得られるし、ものを買おうと思えば買える。だからまずは展示会場に足を運んでいだくことが重要です

――展示会で「ここを見てほしい」「ここが面白い」というポイントはありますか?

アグロ1アグロ2

吉田 今はスマートアグリ分野ですかね。農業はこれからどのようなスタイルになっていくかは誰も想像できないでしょう。IoTやAIと同じで、これから社会がどう変わるのか、なんとなくイメージはできても、本当にそうなるかは分からない。それと同じで農業もどのように変わっていくか分からないから、我々もどんなものが出てくるのか、どんな発表・提案があるのかとワクワクしています。

そして、今年は東京だけなく、九州と北海道でも開催します。地域展開できて良いかと思います。展示会のメリットは、展示会に出展するだけで、興味をお持ちの潜在顧客の方からお越しになる点です。こちらが個々に出向かなくても、実際にものを手に取って見てもらえます。東京の企業がその日のうちに北海道と四国の企業に行くことはできませんが、展示会は、物理的な時間や距離を省くことのできる、極めて有効なビジネスモデルです。そこでどれだけ商機が生まれるかも楽しみです。

女性経営者の育成、安全基準をより強固にする規格、そして企業と農家を結びつけ、新たなビジネスの場を作り出すJMAの展示会。

それぞれが補いあってアグリビジネスの発展を担っていくことの重要性をひしひしと感じた。

次回はアグリビジネスをさらに掘り下げ、具体的に展示会ではどのような企画やコーナーを作って“場”を作り出していくかをJMA 産業振興センターセンター長 安江あづさに話を聞く。

ページの先頭へ
< /body> < /html>